カロリーのためではなく

AFP=時事「古代人の食人、単なる「食事」ではない 研究」https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170407-00000028-jij_afp-sctch


先史時代のネアンデルタール人ホモ・サピエンスに認められるカニバリズム*1は栄養のためというより儀礼のためだったという英国ブライトン大学の考古学者ジェームズ・コール博士*2の研究の話*3。要するに、人間は野生の馬、熊、猪などと比べて、栄養学的な価値がかなり劣っている。とすれば、食人は栄養以外の別の意味があった筈というロジック。まあ、これは現代社会における観察とほぼ重なるのではないか。緊急避難的なものを除外すれば、現代において確認されているカニバリズムは或る種のフェティシズムを含めて、手段的(instrumental)ではなく表現的(expressive)なものだということはいえるだろう。まあ、そもそも人間の食事である以上、純粋に栄養学的な意味しか持たない食事というのはあり得ないというか、そうなったら食事ではなく餌だろうということはある。また、或る程度以上の大型動物の場合、狩りはその実行から獲物の消費に至るまで社会的(集団的)な性質を有するということも考えなければいけない(Cf. 柳田國男『食物と心臓』)。

食物と心臓 (講談社学術文庫 165)

食物と心臓 (講談社学術文庫 165)