「花束」への飛躍、「花束」からの飛躍

産経新聞』の記事;


花束拒否され?尿を散布…ストーカー規制法違反容疑で70歳男逮捕 京都・宇治
2016年12月2日 21時47分

産経新聞


 知人女性宅の玄関先に液体をまいたとして、京都府警八幡署は2日、ストーカー規制法違反容疑で、京都府宇治市の無職の男(70)を逮捕した。

 同署によると、男は女性に花束を贈ろうとして断られたりしていた。男は容疑を認め、「女性に避けられたことに対する恨みで自分の尿をまいた」などと供述しているという。

 逮捕容疑は11月30日午後2時ごろと12月1日午前11時ごろ、同府八幡市内の女性(64)方の玄関先に、ペットボトルに入れた尿のような液体を散布したとしている。

 同署によると、10月上旬に女性から被害の相談を受け、同署が11月上旬に防犯カメラを玄関先に設置したところ、男が玄関先で液体をまく様子が映っていた。

 男と女性は同じ趣味のサークルに所属。今年8月、サークル活動の際に男が女性に花束を手渡そうとし、女性が受け取りを拒否したところ、9月ごろから同様の被害にあうようになったという。
http://news.livedoor.com/article/detail/12365030/

冨田真由さんはプレゼントを拒否したためにずぶりと刺されてしまったわけだけど*1、小便を「散布」されるだけで済んだのは不幸中の幸いだったかも知れぬ。
「同じ趣味のサークルに所属」していたということだけど、それと「花束」の間には飛躍があるよ。「同じ趣味のサークルに所属」していただけで、全然個人的な付き合いもない男からいきなり「花束」だと、吃驚して、そしてどん引きするのは自然だろう。「花束」に行く前に、「サークル」が終わった後でお茶をするとか飲みに行くとか、さらには別の日にデートをするとかというプロセスがあるべきだろう。また、プレゼントを正当化するために、お誕生日とかヴァレンタイン・デーとかクリスマスといった制度があるわけでしょ。そういう口実なしの端的なプレゼントもやはり吃驚&どん引きになる可能性が高い。70歳ということだと、1960年代に青春期を過ごしたわけで、若者文化としての恋愛が定着している世代の筈だ。若い頃にやった筈の恋愛の手順を忘れてしまったのだろうか。それとも、個人的な理由で恋愛の経験値を積むことができなかった?
さて、世代を問わず、友だちモードから恋愛モードへの転換の仕方がわからなくて悩んでいる人は少なくないだろう。また、恋人同士や夫婦であっても、セックスをするには「日常から非日常への架け橋、オンとオフの切り替えのスイッチ」が必要になる(森林原人*2セックスレスカップルと非モテ男子に共通する「できない」理由」*3)。「架け橋」や「スイッチ」が見失われれば「セックスレス」に陥る。「架け橋」や「スイッチ」は性的関係になるための前提としての恋愛モードへの転換にも存在している。また、恋愛にしても性愛にしても、チープ・トリック*4

I love you to love me
I want you to want me
I need you to need me
と歌っているように、二重にコンティジェントな特性を持っている*5。「架け橋」は独りではなく2人で渡らなければいけないのだ。「架け橋」を一歩一歩渡らずに、強引に独り善がりに飛び越そうとすると、この宇治の爺のようなプチ自爆テロとしての「ストーカー」行為が帰結する危険性があるとはいえるだろう。
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