佐伯彰一

毎日新聞』の記事;


<訃報>佐伯彰一さん93歳=米文学者、文芸評論家

毎日新聞 1月5日(火)19時17分配信


 国際的な視野をもつ批評で活躍した文芸評論家で米文学者、東京大名誉教授の佐伯彰一(さえき・しょういち)さんが1日、肺炎のため東京都内の病院で死去した。93歳。葬儀は近親者で営んだ。喪主は長男で東京工業大教授(米文学・米文化史)の泰樹(やすき)さん。

 1922年生まれ、富山県育ち。43年東京大英文科卒。米ミシガン大などで日本文学を講じた。ヘミングウェーやフォークナーらの研究・翻訳のほか、戦前、戦中に知識人の転向や挫折を見せつけられたのを原点に50年代から文芸評論に取り組んだ。68年から東京大、83年から中央大の教授を歴任した。

 三島由紀夫研究の第一人者としても知られ、新潮社刊行の全集(35巻・補巻1、76年完結)の編集を担当。95年に東京・世田谷文学館、99年には山梨県三島由紀夫文学館のいずれも初代館長を務めた。谷崎潤一郎らが自己の資質を見いだす過程を追った「物語芸術論」で80年読売文学賞。他の著書に「日本人の自伝」(74年)、「評伝三島由紀夫」(78年)、「自伝の世紀」(85年)など多数。保守系の論客としても知られた。

 評論家の業績で82年日本芸術院賞。88年日本芸術院会員。99年に正論大賞(特別賞)。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160105-00000060-mai-peo

右寄りの方だということは勿論知ってはいたが、実際のところ「保守系の論客」としての佐伯彰一というのは殆ど知らないのだった。
故郷である富山県の『北日本新聞』の記事は詳しい;

佐伯彰一さん死去 立山町出身の文芸評論家、93歳

北日本新聞 1月6日(水)0時12分配信


 立山町出身の文芸評論家で、米国文学研究や翻訳、比較文化研究で知られる日本芸術院会員の佐伯彰一(さえき・しょういち)さんが1日午後1時48分、肺炎のため東京都目黒区の病院で死去した。93歳。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は長男泰樹(やすき)さん。

 立山町芦峅寺神職の家に生まれ、1943年に東京帝国大(現東京大)英文科を卒業。戦後、米国留学を経て東京大教授、中央大教授などを長く務めた。客員教授として米国やカナダの大学でも日本文学を講義。日米の現代文学や、自伝を通しての比較文化研究に取り組んだ。作家の三島由紀夫研究でも知られる。晩年は神道を中心に日本人の宗教的心情にも関心を広げた。

 東京大名誉教授。東京の世田谷文学館山梨県三島由紀夫文学館の館長などを歴任。文学の普及にも熱心で、日本文芸家協会日本ペンクラブの役職も務めた。91年、立山博物館(立山町芦峅寺)開館に合わせて名誉館長に就任。93年度から7年間にわたって県芸術文化協会が主催する「とやま文学賞」の選者を務め、同協会の名誉会員。立山町名誉町民。

 「物語芸術論」で読売文学賞、「自伝の世紀」で芸術選奨文部大臣賞。他の著書に「内と外からの日本文学」「評伝三島由紀夫」「日本人の自伝」など。


■県内関係者「功績計り知れない」

 佐伯彰一さんは立山博物館の名誉館長を務めるなど、郷土の文化振興にも尽くした。県内の関係者からは「古里のことをいつも気に掛け、応援してくれた。功績は計り知れない」との声が上がった。

 佐伯さんは生まれ育った立山町芦峅寺に深い愛着を持ち、地元で開館した同館の運営を後押ししてきた。折に触れ助言を受けたという前館長の米原寛さん(72)=富山市磯部町=は「先人が積み重ねてきた歴史を後世に伝えるのが博物館の役割だと教わった。精神的支柱だった」と話す。

 2012年には、先祖代々営む宿坊で受け継いできた立山曼荼羅(まんだら)の「吉祥坊本(きっちょうぼうぼん)」を同館に寄贈した。江戸末期、皇女和宮(かずのみや)が寄進した第一級の史料だ。「富山のために役立ててほしいという強い思いが伝わってきた」と振り返る。訃報を受け、同館では7日から特別展示する。

 県芸術文化協会長で、仏文学者の吉田泉さん(66)=富山市浜黒崎=は東京大在学中、教授だった佐伯さんの講義を受けた。「先生の話は時代の息吹が感じられ、刺激があった。広い視座を持って文学に向き合うことの大切さを学んだ」。同じ富山出身とあって自宅に招かれるようになり、時間を忘れて文学談義に花を咲かせたという。「気さくな人柄で心から尊敬できる方だった」と死を悼んだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160106-00043070-kitanihon-l16

佐伯彰一という名前を最初に意識したのは、大学に入って直ぐに倉橋由美子夢の浮橋』の解説を読んだときだった。その後意識から遠のいていたのだが、その後、講談社学術文庫の『外から見た近代日本』を読んで、戊辰戦争後の長岡と南北戦争後のアトランタを対比させる視点が面白いなと思ったことがある。今Wikipediaを眺めていて*1、佐伯氏がフィリップ・ロスの『さよならコロンバス』を訳していたことに気づいた。
夢の浮橋 (中公文庫 A 17)

夢の浮橋 (中公文庫 A 17)

さようなら コロンバス (集英社文庫 ロ 1-1)

さようなら コロンバス (集英社文庫 ロ 1-1)