礒崎陽輔*1という政治家については以前に、その「私設秘書」が他人の顔を「レンガ」でぶん殴ったという事件を採り上げたことがあり、その時にこの男が安倍晋三の「補佐官」だったということを知ったのだが*2、本人が惹き起こした事件ではなかったし、磯崎が具体的にどんな生物なのかは知ろうともしなかった。
この磯崎が秘書の事件の2年以上前に、
だの、
時々、憲法改正草案に対して、「立憲主義」を理解していないという意味不明の批判を頂きます。この言葉は、Wikipediaにも載っていますが、学生時代の憲法講義では聴いたことがありません。昔からある学説なのでしょうか。
https://twitter.com/isozaki_yousuke/status/206985016130023424
だの、
「立憲主義」、Wickpediaでは、樋口陽一先生の著書が引用されています。私は、芦部信喜先生に憲法を習いましたが、そんな言葉は聞いたことがありません。いつからの学説でしょうか?
https://twitter.com/isozaki_yousuke/status/207001181443203072
と呟いて、法学関係者から呆れられていたということを、最近になって知った*3。
我々が憲法の教科書に使ったのは、有斐閣の法律学全集で、清宮四郎先生と宮澤俊義先生のもの。ありませんね。佐藤功先生の「日本国憲法概説」を見ていますが、「立憲主義」は、ないようです。法制局に聞くと、京都大学の佐藤幸治先生が広めたのではないかと。それならば、80年代後半以降でしょう。
https://twitter.com/isozaki_yousuke/status/207086976984289280
此奴、何処の阿法学部出てるんだよと思ったのだけど、Wikipediaによれば、東京大学阿法学部でした*4。素朴な疑問なのだけど、Wikipediaの日本語版*5だけじゃなくて英語版*6は参照したのだろうか。そうすれば、いくら何でも「立憲主義」は「80年代後半以降」という理解は出てこないと思うのだけど。
「憲法」がなくとも政権は可能である。昔日本の朝廷は大宝律令や養老律令をつくっても「憲法」はつくらなかった。鎌倉幕府も「御成敗式目」は作ったけど、「憲法」は作っていない。江戸幕府も「武家諸法度」や「禁中並公家諸法度」は作っても「憲法」は作らなかった。それなのに、近代国家は何処でも「憲法」があるのかということを一度も疑問に思ったことはなかったのだろうか。今年800周年を迎えた「マグナ・カルタ」*7に遡って復習しろよと言いたくなるけど、偏差値に関しては磯崎をかなり下回るものの「立憲主義」を知らないとは言わない安倍晋三にとっては、「マグナ・カルタ」以来の「立憲主義」の歴史というのは超克の対象なのだった*8。磯崎の場合も、これは〈装われた無知〉であって、改憲派ならぬ壊憲派であることを暗示しているのかも知れない。まあ、「立憲主義」否定の帰結をひとつ挙げると、日本が明治時代に勝利した日清・日露という2つの戦争の正当性が失われてしまうということがある。これらの戦争は、
近代的な立憲国家=日本
VS.
野蛮な専制国家=清朝或いは帝政露西亜
というロジックで遂行された筈だからだ(See 山室信一『日露戦争の世紀』*9)。
日露戦争の世紀―連鎖視点から見る日本と世界 (岩波新書 新赤版 (958))
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サーチ・エンジンで「立憲主義」を検索すると、「礒崎陽輔」をプラスせよというサジェスチョンが出る。つまり、磯崎と「立憲主義」は切っても切り離せない関係になっている。或いは、磯崎は否定(否認)した「立憲主義」にアイロニカルな仕方で惹き付けられていると言えるのも知れない。
2012年の磯崎騒動に関しては、
tyaborin「(追加あり)立憲主義を知らない自民党「憲法起草」委、事務局長、「礒崎陽輔」議員に関する法律関係者」http://matome.naver.jp/odai/2134848973007545801
「立憲主義がついに理解できなかった自民党改憲論者」http://d.hatena.ne.jp/asobitarian/20130603/1370247199
を取り敢えずマークしておく。
また、「立憲主義」に関しては、以前にもちょこっと言及した*10
Wil Waluchow “Constitutionalism” (Stanford Encyclopedia of Philosophy) http://plato.stanford.edu/entries/constitutionalism/
Constitution Society “Constitutionalism” http://www.constitution.org/constitutionalism.htm
をマークしておく。後者は(英語の)文献目録。
*2:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141007/1412681217 Citing http://mainichi.jp/select/news/20141006k0000m040111000c.html
*3:Via http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20150516/1431744411
*4:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A4%92%E5%B4%8E%E9%99%BD%E8%BC%94 但し、Wickpediaにどう書いてあるかは知らない。
*5:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%8B%E6%86%B2%E4%B8%BB%E7%BE%A9
*6:http://en.wikipedia.org/wiki/Constitutionalism
*7:See eg. http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141105/1415164673
*8:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130709/1373336126
*9:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140827/1409108595