選か撰か

http://d.hatena.ne.jp/nessko/20140907/p1


2001年に44歳の若さで急逝した井田真木子*1が甦りつつあるという話。里山*2という小さな出版社から『井田真木子著作撰集』が刊行されるという。
井田さんはこれからも1990年代の書き手ということでは真っ先に想起されることになるんじゃないか。本として読んだことがあるのは、『プロレス少女伝説』、『小蓮の恋人』、『もうひとつの青春』。『フォーカスな人たち』は昨年古本を見つけた*3

プロレス少女伝説 (文春文庫)

プロレス少女伝説 (文春文庫)

もうひとつの青春―同性愛者たち (文春文庫)

もうひとつの青春―同性愛者たち (文春文庫)

フォーカスな人たち (新潮文庫)

フォーカスな人たち (新潮文庫)

以下は、井田さんの作品の話ではなく、「撰集」の「撰」という字のこと。新選組新撰組かという問題もあった*4。「撰」の字訓に「えらぶ」というのがあるのは知っているし、『大辞泉』にも「撰」の定義として、詩歌・文章を選び抜いて書物にまとめること」とある。でも、selectという意味で「選」じゃなくて「撰」という漢字を使うことにはかなりの(拒絶反応に近い)抵抗がある。特に漢文的な文脈では、「撰」という字は、writing、著とか記に近い意味合いで用いられてきたからだ。
ところで、現代の漢語では「選」と「撰」は発音が分岐してしまっている。「選」はxuan、「撰」はzhuan。「撰」にselectの意味合いはなく、「文章を書く、著作する」という意味である。用例や熟語として載っているのは、「撰文」、「撰稿」、「撰述」、「撰著」(『中日辞典』小学館(初版)、p.1944)。なお、これはあくまでもマンダリンの話であり、広東語その他の〈方言〉、或いはヴェトナム語や朝鮮語などの諸言語ではどうなっているのかについては、全く審らかではない。
中日辞典

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