今は高校野球部?

承前*1

STAP細胞小保方晴子騒動を巡っての、例えば、


@boku_doramimon*2: 小保方さんのSTAP細胞の論文がまた叩かれてるけど、何でこんなに叩かれるのかな? ips細胞研究に何十億も投資してる海外の製薬会社が、株価を守る為の陰謀じゃないの? #ips細胞 #STAP
https://twitter.com/approveendorse/statuses/443008739713368064
という言説がある*3。こういうのは馬鹿のサンプルにすぎず、一時は似たような夥しい文言が再生産されたに違いない。
しかし、仮にSTAP細胞が実在したとしても、既に本格的な(人間に対する)臨床研究段階に入っているiPS細胞とは技術の成熟度が全く違うということは容易に見て取れるだろう。
ということで、楊井人文STAP細胞とiPS細胞の比較報道は誤り 山中教授「影響非常に大きい」*4に再録されている、古舘伊知郎による山中伸弥氏へのインタヴューをコピペしておく;

Q.まず、小保方さんとSTAP細胞の素晴らしいところから教えていただけますか。

A.iPS細胞が8年前に生まれた時、野球に例えますと「こりゃすごい。”小学校一年生”で遠投百メートル投げるものすごい子供がいる」と、そんな感じで世界を驚かせたと思うんですね。「こんな小学生は二度と現れないだろう」と思っていたら突然、「今度は”小学校一年生”で時速100キロで投げるやつがいる。また驚いた」と。僕はiPSができた時も驚きましたが、今回の報道のときも本当に驚きました。しかも、それが日本の若い研究者の方だと。心から誇りに思っています。

Q.そうすると、やはり”小学校一年生”で百メートルの遠投と100キロのスピードで投げる、これが組み合わさっていくことによって、とてつもないことを想像するわけです。

A.まず私が報道を見て思ったのはそのことです。二つの全く違う技術、個性も違う技術が組み合わさることによって、今までできなかったことができるんじゃないか、また今はわからないことがわかるんじゃないか、そう思ってワクワクしました。

Q.なるほど。これは私の個人的な思いも入るんですが、我々マスコミがSTAP細胞を初報から伝えていく中で、ずっともやもやしていることがありまして…というのは、非常に分かりやすく、iPS細胞とSTAP細胞を引き比べて「できるスピードはSTAP細胞の方が早い」とか「がん化の懸念はSTAP細胞はないんじゃないか」とか、非常に単純明快に比較してみせたわけです。これは違うんじゃないかと思いながら、私もそういうニュアンスで初報を伝えた部分がありました。これに関して山中先生に是非うかがいたいのですが。

A.私も報道を見ていて本当に心を痛めていました。素晴らしい小保方さんの報道、これは私も大歓迎。私も娘がいまして、いま医者を目指していますが将来研究するかもしれない。うちの娘も小保方さんのように素晴らしい研究者、素晴らしい発想をもってもらいたいなと思いました。

でも、もう一つの報道ですね、「STAP細胞はiPS細胞より安全」「iPS細胞よりも効率が高い」。この報道はとっても残念でした。先ほど言いましたように、iPS細胞ができたときはまだ“小学生”だったわけです。たしかに遠投100メートル投げられる、すごい可能性がある、でもそれだけでは大リーグには入れません。すごい素質をもった”小学生”をどう育て、どう順調に記録を伸ばしていくか。これがとても大切な、これまで8年間の最大の努力目標でした。

(略)最初は基礎研究、まずマウスでiPS細胞もSTAP細胞もできたんですが、それがどう発展するか、最終的に臨床研究、で本当の治療を目指したいわけですね。iPS細胞もこの道のり(注:基礎研究、前臨床研究、臨床研究)を通ってきました。今おそらく「20歳くらいで大リーグに行けるんじゃないか」というくらいの選手まで育ってきていると思います。ほぼ”大リーグ入り直前”と私たちは自負しています。

Q.前臨床研究から臨床研究にも入っていった。それでいいますと、たとえば、比較的早くできる可能性を秘めていると言われている有望な「加齢黄斑変性」(注:加齢で網膜の一部に生じる難病)、この目の病気に対する細胞ができつつあるという中で、今回「iPS細胞にはリスクがあってSTAP細胞が夢の細胞だ」と簡単に割り切って比較しちゃうことの間違いが、ちょっと悪い影響が出た部分がある?

A.これは非常に大きな影響があったと思います。特に今、神戸の臨床研究、協力いただく患者さんもだんだん決まりつつあると思います。そうした患者さん、ご家族を中心とする、非常に多くのiPS細胞技術の実現をいまかいまかと待っておられる方にとても大きな不安と誤解と与えてしまったなと、本当に残念に思います。私たちはこれまでも努力してきたつもりなんですが、これからさらにiPS細胞の今の姿、できたときの小学生100メートル投げるというのではなくて、成長して20歳になって時速150キロ投げられます、遠投150メートル投げられますと、あくまでたとえ話ですが、いってみれば「新世代のiPS細胞」を作って私たちは臨床応用直前に来ているわけですから、今の正しい姿をお見せすることが本当に大切だと思います。

Q.具体的にうかがいたいのですが、iPS細胞はがん化のおそれがある、4つの遺伝子を入れることによって人工多能性幹細胞STAP細胞はそうじゃなくて刺激を与えるだけで天然のようにできあがる、という比較論がちょっと違うと思うんですが、iPS細胞はもっと進んでますよね?

A.iPS細胞はこの8年の研究で、がん化の問題だとか効率の低さの問題、いろいろな障害をひとつひとつ克服し、完全に昔できたときとは全く違う細胞といっていいような新型のiPS細胞になっています。

Q.がん化の懸念がだんだん薄れてくる流れになっていますし、もうひとつは発生ですね、iPS細胞は一番はじめは0.1%。今は違いますね?

A.今は全然違います。2006年の最初の報告時は0.1%くらいでしたが、2009年には20%にまで増やすことに成功して「Nature」という雑誌に報告しております。さらに、昨年はイスラエルのグループが因子、私たちのiPS細胞を少し変えることによってほぼ100%の細胞をたった7日間でiPS細胞にすることに成功したとの報告も「Nature」、STAP細胞のときと同じ雑誌ですけれど報告していますので、0.1%というのは昔の“小学校”のときの成績であって、今の成績を見ていただきたい。大リーグのスカウトの方も今の成績で決めると思います。”小学校”の成績では誰も決めないと思いますから。そのあたりの誤解はぜひなくしていきたいと思います。