穂村/金沢

資生堂のPR雑誌『花椿*1の12月号に穂村弘*2金沢百枝という美術史家との対談が載っていた(pp.24-27)。少し抜き書き。


金沢 中世のロマネスク美術が好きというと「下手なものが好きなんですね」と言われることがあるんですが、肩の力が抜けていたり、少し残念だったりするものが好きです。下手を装っているものは嫌なんです。
穂村 中世美術は下手だと思われてしまうんだ。
金沢 今の日本人はかなりルネサンス美術に洗脳されている感じがします。中世まで立体表現や遠近法はなかったのにルネサンス以降は約束事になって、それがないと下手ということになってしまっている。(p.26)

穂村 ただ、漫画でも少女性のきらめきを描いた作品は多いけれど、その後の成熟を描いた傑作は一気に減りますよね。「男性は女性の成熟に対して冷たい」と言われてドキッとしたことがあるけれど、じゃあきらきらした大人の女性とはどういう人かというと…。
金沢 今は女性像のロールモデルがないですね。子供を産んでよき母親になっていないと一人前じゃないだろう、という風潮も根強いので、そうでない人はいったい何になるの? と思ってしまう。私もこれからおばあちゃんになるまでの期間はいったい何になればいいんだろう、って。ただ、私がロマネスクが好きなのは、お手本もないところで、表現のために一生懸命もがいている感じがするところなんです。それと一緒にするのはどうかと思いますが、今の私たちももがいている時期かな、というのがあります。方向性が見えずに、なんとかしようとしているところがいいのかなと思っているんです。(p.27)