楊逸*1「カリフォルニアの牛肉麺」『毎日新聞』2013年6月2日
上海に既にけっこうな年月いるけれど、「加州牛肉麺」というのは知らなかった。また上海以外の中国の都市でも「加州牛肉麺」を見た記憶はない。しかし楊逸さんによると、既に1996年には「加州牛肉麺」の店が黒龍江省ハルピンに存在し、彼女が「訪れた中国の都市、大小拘わらず繁華街に行けば、必ずと言っていいほど「加州牛肉麺」の看板が目につく」という。そして、味については、
と書いている。さらに、このエッセイでは、カリフォルニアに「牛肉麺」はなかったという話が続く。
数年前北京で泊まっていたホテルの横にたまたま「加州牛肉麺」があったので、入ってみた。醤油ベースのスープに、麺が太め、その上に牛肉と青菜を乗せただけで、一見日本の中華レストランでよく出される「牛〓*2麺(牛バラ麺)」のような麺だが、麺のコシも、とろ〜としたスープのうまみも、柔らかくて滑らかな牛肉の味わいもなく、普通すぎるほど個性のない味だった。
アメリカのカリフォルニアではこんな味気のないラーメンが食べられているのか、と思いながら、胡椒をふんだんにふりかけて、それでも半分を残してしまった。(後略)
少なくとも上海では、「牛肉麺」は「加州」というよりは台湾に結び付けられているとはいえる*3。というか、四川料理にルーツを持つ台湾料理。抗日戦争で中国の首都が重慶に移り、そこで四川料理を覚えた国民党の兵士が台湾に渡って「牛肉麺」を売り始めた、云々。
勿論四川とも台湾とも関係のない「牛肉麺」もある。俺がよく行くムスリム食堂の「牛肉麺」は美味く、そして安い(1杯8元)。