「なぜ、アジアで極端な少子化が進むのか」http://globe.asahi.com/feature/100125/04_2.html
エマニュエル・トッド氏へのインタヴュー。
曰く、
因みにトッド氏は日本に対して「核武装」を勧めたことがある「ドゴール主義」者である*1。
私には4人子どもがいるが、3歳から無料で通える保育学校など、子育てを社会が支える仕組みが整備されていなければ、こんなに子どもをつくらなかっただろう。こうした育児の社会化もフランス的な個人主義が背景にある。一方、子どもへの思い入れが強い直系家族の国では、早い時期から子育ての多くを社会に委ねることに抵抗感を持つ人も多いだろう。
氏は〈家族還元主義〉で有名であるが、ここでも家族構造について、
と述べている。
――フランスをはじめ欧米では、結婚していないカップルから生まれる子どもが相当の割合を占め、出生率を押し上げています。アジア諸国では婚外子の比率が低いのはなぜでしょうか。トッド 世界の家族類型に関する分析では、日本も韓国も台湾も「直系家族」と呼ばれるタイプに属する。親が子どもに対して権威的で親子の同居率が高く、家系を重視し、子どもの教育に熱心、などが特徴だ。欧州ではドイツがそうだ。家系重視のため、結婚外から生まれる子どもを許容しにくい面があるのではないか。
一方、米英や北欧の一部、フランスは「核家族」タイプだ。親子関係より夫婦関係を重視し、親子関係は独立的で同居しない一方、親は子どもの教育にあまり熱心ではない。家系を重視しない個人主義的な傾向が婚外子の増加と関係しているのだろう。
「子育てを社会が支える仕組み」だが、逆に言えばこれを外せば出生率は下がるということになる。1950年代に日本政府はこのことを真面目に検討したらしいのだ;
幸いにして、「家族手当と扶養控除の廃止」は実行されなかった。
しかしこの頃、国が気にしていたのは増え続ける人口増加であった。敗戦によって日本は朝鮮半島や東南アジアなどの領有地のほとんどすべてを失い、領土は全盛期の1割ほどになっていた。しかも、朝鮮特需などによって景気は回復していたものの、食糧事情は依然として厳しい状況にあった。にもかかわらず、新生児の数は上がる一方だった。これは、戦争から復員してきた男性たちが、平和を実感する中でセックスを存分に楽しみ、子作りに励んだからであった。そのため、昭和22年(1947年)から昭和24年(1949年)の3年間は、出産数が年間270万人にも達した。いわゆる「ベビーブーム」と呼ばれる時期である。そうした現状に、霞ヶ関の高級官僚たち、具体的には厚生省(現・厚生労働省)の付属機関である人口問題審議会は「このまま人口が増え続ければ日本は滅びる」とばかりに、人口抑制策を次々に打ち出した。
当時の新聞を見ると、数々の人口抑制のため、すなわち家族計画のための対策が報じられている。だが、そのほとんどは「家族計画の重要性についての教育の徹底」などといった理屈の上のものばかりで、具体策としては「社会保険による避妊具や薬品の配布および生活困窮者への同無償または廉価配布」が挙げられている程度である。ちなみに、ここでいう「薬品」とは避妊薬のことではなかろうかと思われる。実際には殺精子剤で、すでに昭和23年(1948年)に薬事法が改正され、翌1949年には新薬として全78種の避妊薬が認可。さらに、人工中絶も合法化された。すでにこの頃から、国は人口増加を懸念していたとみても不自然ではない。
ところが、人口問題審議会が国会に提出した対策の中に、「家族手当と扶養控除の廃止」が含まれていた。当時はまだ大卒の初任給が7,000円から8,000円という時代で、庶民の生活は厳しい状況にあった。ところが、人口問題審議会の偉いさんたちが目をつけたのはそこである。
「ただでさえ貧乏な庶民は、手当や控除がなくなれば子作りをしなくなるだろう」
何とも乱暴な考え方である以前に、いかにも世間知らずのエリートが考えそうなことである。さらに、これに先立って同年4月には日本家族計画普及会(現・社団法人 日本家族計画協会)が発足。スキンの普及に努めるなどの、実効性ある活動を進めることになった。
(橋本玉泉「政府のトンチンカンな政策は昔から 「人口増加を抑制せよ」と家族計画を推進したその具体策は?」http://www.menscyzo.com/2012/03/post_3757.html)
ところで、当時の日本人は闇雲にセックスしていたわけではなかったのだ;
戦後になって全面改正された法律のひとつに、薬事法がある。1948(昭和23)年に改正され、翌1949年に新薬事法によって認可された新薬は全78種あった。ところが、そのすべてが避妊薬だった。
( 橋本玉泉「終戦直後の「避妊薬」ブーム」http://www.menscyzo.com/2009/09/post_314.html)