梅毒実験@グアテマラ

NHKの報道;


米の性病人体実験 83人死亡
8月30日 11時2分

アメリカ政府が、1940年代に中米のグアテマラで、薬の効果を調べるために、精神的に障害のある人たちや受刑者などを性病に感染させる、人体実験を行っていた問題で、調査に当たってきた専門家による委員会は、29日、実験で少なくとも83人が死亡したことを明らかにしました。

この問題は、1946年からの2年間、アメリカの衛生当局に所属する研究者らが、当時新しく開発された抗生物質の効果を調べるために、グアテマラで精神的に障害のある人や受刑者、兵士などを梅毒などの性病に感染させていたものです。去年10月、アメリカのウェルズリー大学の教授の研究によってこの問題が発覚して以来、オバマ大統領の指示で実態の調査に当たってきた専門家による委員会は、29日、ワシントンで調査結果を発表しました。それによりますと、実験はおよそ5500人に行われ、このうち1300人が性病に感染し、少なくとも83人が死亡したということです。この問題で、オバマ大統領がすでにグアテマラのコロン大統領に電話をかけて直接謝罪していますが、委員会のグートマン代表は、被害の実態が具体的に明らかになったことを受けて、「今後、同じことが二度と起きないように、私たちは過去から学ばなければならない」と強調しました。委員会は来月、調査結果をまとめた報告書をオバマ大統領に提出することにしています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110830/t10015239511000.html

より詳しい報道は例えば、


Associated Press “Shocking new details of US STD experiments in Guatemala” http://www.guardian.co.uk/world/2011/aug/30/guatemala-experiments


NHKの方では「アメリカの衛生当局」となっているが、APの記事によれば、研究主体はUS Public Health ServiceとPan American Sanitary Bureau。また、当時のグアテマラ政府機関も研究に関与していた。グアテマラ政府は独自に調査を行っていて、レポートが11月に出るという。これはunethicalというより寧ろcriminalというべきだろう。Philip Dayle氏もいうように、たんなるごめんなさいでは済まず、今後金銭的補償も争われることになるのではないか*1。何故研究が米国内ではなくグアテマラで行われたのか。とてもじゃないけどこんな実験は米国内では許可されないだろうという自覚が研究者側にあった*2グアテマラ政府機関の関与もそうなのだが、グアテマラの米国に対する従属関係が問われなければならないだろう。また、研究の軍事的背景として、(どの国でもそうだが)当時米軍は兵士の性病、特に海外で感染し、復員とともに国内に病気が広がることに頭を悩ましていたということがある*3

*1:“Guatemala syphilis experiments: why the US's apology may not be enough” http://www.guardian.co.uk/law/2010/oct/08/guatemala-syphilis-experiments-us-apology

*2:Chris McGreal “US says sorry for 'outrageous and abhorrent' Guatemalan syphilis tests” http://www.guardian.co.uk/world/2010/oct/01/us-apology-guatemala-syphilis-tests

*3:Rory Carroll “Guatemala victims of US syphilis study still haunted by the 'devil's experiment'” http://www.guardian.co.uk/world/2011/jun/08/guatemala-victims-us-syphilis-study この記事では実験の被害者の声が収集されている。