『陳独秀的最後歳月』

今年は中国共産党結成90周年だったのだ。
中国共産党の初代総書記だった陳独秀*1がどこまで復権しているのかには興味がある。ということで、朱洪『陳独秀的最後歳月』(東方出版中心、2011)を買う;


引子


第一章 被捕與審判(1932年10月〜1933年5月)
第二章 判決十三年(1933年5月〜1934年7月)
第三章 改判八年(1934年7月〜1937年8月)
第四章 自南京到武漢(1937年8月〜1938年7月)
第五章 入川(1938年7月〜1939年5月)
第六章 初到鶴山坪(1939年5月〜1939年12月)
第七章 到重慶、江津(1940年1月〜1940年4月)
第八章 重返鶴山坪(1940年5月〜1940年11月)
第九章 江津過冬(1940年11月〜1941年4月)
第十章 三到鶴山坪(1941年4月〜 1941年10月)
第十一章 病鶴残年(1941年11月〜1942年5月27日)


後記

陳独秀の晩年について。朱洪氏は安徽省の安慶師範学院教授で、陳独秀研究家。ほかに、『従領袖到平民――陳独秀浮沈録』、『陳独秀與中国名人』、『陳独秀伝』、『陳独秀哲学思想研究』、『陳独秀與第三国際人物論』、『陳独秀風雨人生』といった著書があるようだ。陳独秀は晩年、古代史や言語学(音韻論)に関心を寄せるが、この本をぱらぱらと捲っていて、それが中国史を巡るスターリン主義者とトロツキストの論争に関係していることを知る。スターリン主義者は中国史における奴隷制社会の存在を主張し、トロツキストはそれを否定していた。
手許にある日本語の本で陳独秀への言及があるのは、例えば佐々木力『科学技術と現代政治』*2所収の「西欧の科学革命と東アジア」pp.71-77、「二十一世紀資本主義と環境社会主義」pp.201-202。

陳独秀は、日本思想史に準えて言えば、福澤*3のみならず中江兆民をも一身で体現し、その後のマルクス主義の世代の辛苦をも経験した屈強の思想家でした。独秀は終生トロツキストとして生き、したがってマルクス主義者として死にました。(p.75)
また、「二十一世紀の中国を牽引する思想家は、もはや毛沢東ではない、もちろん蒋介石でもない、陳独秀かもしれません」(p.202)。
科学技術と現代政治 (ちくま新書)

科学技術と現代政治 (ちくま新書)

佐々木氏が陳独秀の著作以外で参考文献として挙げているのは、


野村浩一『近代中国の思想世界』岩波書店、1990
Chow Tse-Tsung The May 4th Movement: Intellectual Revolution in Modern China Harvard University Press, 1960
周程「陳独秀における「民主」と「科学」――五四新文化運動期を中心に」『思想』905、1999
任建樹『陳独秀大伝』上海人民出版社、1999
王観泉『被綁的普羅米修斯――陳独秀伝』(台北)業強出版社、1996
横山宏章『陳独秀朝日新聞社、1979
Lee Feigon Chen Duxiu: Founder of the Chinese Communist Party Princeton University Press, 1983
Gregor Benton (ed.) China's Urban Revolutionaries: Explorations in the History of Chinese Trotskyism, 1924-1952 Humanities Press, 1996


など。