20世紀のイルミナティ(メモ)

A Culture of Conspiracy: Apocalyptic Visions in Contemporary America (Comparative Studies in Religion and Society)

A Culture of Conspiracy: Apocalyptic Visions in Contemporary America (Comparative Studies in Religion and Society)

http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110627/1309150169の続き。
20世紀に入ってからの「イルミナティ陰謀理論について。Michael Barkun A Culture of Conspiracyから。
先ず2人の英国人が重要であるという(pp.47-49);


Nesta Webster(1876-1960) Secret Societies and Subversive Movements, Reprint, Christian Book Club of America, n.d.
Lady Queenborough, aka Edith Starr Miller(?-1933) Occult Theocrasy[sic.], Reprint, Christian Book Club of America, n.d.


2人は既存の「イルミナティ陰謀理論に2つの新要素を加えた。先ず歴史は全て「秘密結社」の「策謀(machination)」によって作られるという史観。次いで、陰謀の統括者としてのユダヤ人という主張、つまり「イルミナティ陰謀理論ユダヤ陰謀理論の結合(p.48)。また、「イルミナティ」関連団体の多様化が行われている――テンプル騎士団*1、カバリスト*2、Rosicrucians*3、炭焼党など(ibid.)。なお、これらの団体について、 Barkunはホブズボーム*4Primitive Rebelsを参照している。

反抗の原初形態―千年王国主義と社会運動 (1971年) (中公新書)

反抗の原初形態―千年王国主義と社会運動 (1971年) (中公新書)

WebsterとLady Queenboroughの米国への飛び火として、


Gerald Winrod “Adam Weishaupt, a Human Devil”(1935)


がある(p.48)。イルミナティ陰謀理論ユダヤ陰謀理論の合体の背景としては先ず露西亜革命があり、米国国内の事情としては『シオン長老の議定書』の英訳が出て、さらにその内容が(あの自動車の)ヘンリー・フォードによって広く拡散されたことがある(pp.48-49)。『シオン長老の議定書』について、Barkunが参照しているのは、


Stephen Eric Bronner A Rumor about the Jews: Reflections on Antisemitism and The Protocols of the Elders of Zion St. Martin's Press, 2000


ヘンリー・フォードの反ユダヤ主義については、例えば本間長世ユダヤアメリカ人』を参照のこと。

ユダヤ系アメリカ人―偉大な成功物語のジレンマ (PHP新書)

ユダヤ系アメリカ人―偉大な成功物語のジレンマ (PHP新書)

第二次大戦後のイルミナティ陰謀理論にとって重要な出来事は先ず1958年に極右団体ジョン・バーチ協会*5が設立されたことである(pp.49-50)。ジョン・バーチ協会によれば、仏蘭西革命や露西亜革命だけでなく、汎スラヴ主義、アイルランドや伊太利や独逸のナショナリズム、英国帝国主義、ファビアン社会主義も「イルミナティ」のせいということになる*6
1965年以降の「イルミナティ」文献は枚挙の暇がないほどだという。その中で取り上げられているのは、先ずLarry Abraham Call It Conspiracy(1971)(p.51)。 Abraham本の特徴は、悪役としてのCouncil on Foreign Relations*7(雑誌Foreign Affairsの発行元)とTrilateral Commission*8が登場したこと。Barkunによれば、Abrahamは露骨な反ユダヤ主義を回避して、ターゲットをロスチャイルド或いは〈金融資本〉に絞っているという。
同様の傾向の本として、Eustace Mullins The World Order: Our Secret Rulers(Ezra Pound Institute of Civilization, 1992)(p.52)。 Eustace Mullinsは詩人エズラ・パウンドの弟子である。さらに、William T. Still New World Order: The Ancient Plan of Secret Societies(1990)(ibid.)。
基督教原理主義側の反応として言及されるのはTexe MarrsとPat Robertson(pp.52-54)。
先ずテクサス在住の福音主義者であるTexe Marrsの本として挙げられているのは、


Dark Majesty: The secret Brotherhood and the Magic of a Thousand Points of Lights Living Truth, 1992
Circle of Intrigue: The Hidden Inner Circle of the Global Illuminati Living Truth, 1995
Project L.U.C.I.D.: The Beast 666Universal Human Control System Living Truth, 1996


Texe Marrs本の特徴は「イルミナティ」が歴史的存在としてのイルミナティから完全に切断され、何でも意味する謂わば零記号となっていること。
Pat RobertsonのThe New World Order(1991)は(空港の本屋でも売っている)最もメジャーな「イルミナティ」陰謀本であるという。実は最初はそれほどメジャーではなかっただが、1995年にThe New York Review of Books*9に批判的な書評が掲載されたことによって、却って売れ行きに火が点けられたという;


Michael Lind “Rev. Robertson's Grand International Conspiracy Theory” The New York Review of Books February 2 1995, pp.21-25
Michael Lind & Jacob Heilbrun “On Pat Robertson”The New York Review of Books April 20 1995, pp.72-76
“Pat Roberson Says He Intended No Anti-Semitism in Book He Wrote Four Years Ago” NYT March 4 1995



神学的「イルミナティ」論。Des Griffin Fourth Reich of the Rich(1976)(pp.54-55)。 Des Griffinは「イルミナティ」の起源を、〈歴史〉を超えて、「世界創造以前」、ルシファーによる神への反逆まで遡らせる。19世紀スコットランド神学者Alexander Hislop(1807-1865)*10の影響。あからさまな反カトリック思想。
ペンテコステ派の説教者John Todd(pp.55-57)。John Toddは1970年代にブレイクしたが、彼は著書をものしておらず、彼の言説は主に説教の録音テープというかたちで流通している。彼の言説の特徴は〈何でもイルミナティ!〉ということになる。彼が「イルミナティ」すなわち悪魔の手先だと指弾しているのは、ロスチャイルドCouncil on Foreign Relationsだけでなく、ロックフェラー、ケネディ、デュポン、各国の中央銀行、国際銅市場、それからWorld Council of Church*11、Anti-Defamation League*12共産党、Knights of Columbus*13、米国自由人権協会*14フリーメイソン、FBI、CIA、国際連合であり、さらにはジョン・バーチ協会もToddによれば「イルミナティ」のお仲間である。Barkun曰く、”In his hands, the Illuminati became Satan's coordinating mechanism, through which diabolical forces insinuated themselves into virtually every aspect of American life.” さすがに敵を多く作りすぎたのか、1980年代に入ると、John Toddの人気は衰えることになる。また、面白かったのは妖しさ(怪しさ)満点のJohn Toddのライフ・ヒストリーである。彼の母親は「魔女」で、自らも母親から魔法使いとしての訓練を受けたという。兵役からの除隊後、アリゾナ州フェニックスのペンテコステ派サブカルチャーに浸っていたが、オハイオ州デイトンに移住して、オカルト・ショップを経営。デイトンで子どもとセックスした廉で逮捕され、懲役6か月の判決を受けるが、保釈後保釈条件を破って、アリゾナ州フェニックスに帰り、そこでペンテコステ派の説教者としてブレイクし、さらにカリフォルニア進出も果たす。
Barkunはさらにニュー・エイジな「イルミナティ陰謀理論へと論を進めるのだが、それについては次回。

*1:真面目な解説としては、取り敢えずレジーヌ・ペルヌー『テンプル騎士団』とかを参照のこと。

テンプル騎士団 (文庫クセジュ 604)

テンプル騎士団 (文庫クセジュ 604)

*2:カバラについては、取り敢えずKaren Armstrong The Battle for God, p.9ff.を参照のこと。See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080918/1221763583 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090304/1236138432

The Battle for God: A History of Fundamentalism (Ballantine Reader's Circle)

The Battle for God: A History of Fundamentalism (Ballantine Reader's Circle)

*3:See http://en.wikipedia.org/wiki/Rosicrucianism http://www.newadvent.org/cathen/13193b.htm

*4:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110122/1295716186

*5:http://www.jbs.org/

*6:William H. McIlhany “Two Centuries of Intrigue” New American 12, September 16 1996

*7:http://www.cfr.org/

*8:http://www.trilateral.org/

*9:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110624/1308843098

*10:See http://en.wikipedia.org/wiki/Alexander_Hislop なお主著のThe Two Babylons; or, the Papal Worship proved to be the worship of Nimrod and his wifehttp://philologos.org/__eb-ttb/で読めるらしい。

*11:http://www.oikoumene.org/

*12:http://www.adl.org/

*13:http://www.kofc.org/eb/en//index.html See also http://en.wikipedia.org/wiki/Knights_of_Columbus

*14:http://www.aclu.org/