都市と「口」(メモ)

ことばの顔 (中公文庫)

ことばの顔 (中公文庫)

鷲田清一「マイ・アトラス」(in 『ことばの顔』、pp.275-281)から抜書き。若林幹夫『郊外の社会学*1東浩紀北田暁大『東京から考える』*2の余白への落書き;


古くからの都会にあってニュータウンにはないものが三つある。大木と宗教施設と場末の悪所だ。開発地だから古い木は伐採された。公団が都市設計するから、特定宗教の公的施設や犯罪の起こりそうな場所は設計から排除してある。しかしこれらは都市がしぜんに内蔵することになった、世界の〈外〉への口である。人為の世界を超えた時間の澱をたっぷり含んだ自然の世界、この世の価値や約束を超えた別の世界、そして世界の裏面。そういう反世界への入り口が、古い街のそこかしこにある。そしてこの世に居づらいひとたちは、そこで休らう。そういえば京都の地名には、文字どおり異形の出る街の境界に「口」のつくものが多い。鞍馬口、粟田口、荒神口丹波口……。(p.280)
郊外の社会学―現代を生きる形 (ちくま新書)

郊外の社会学―現代を生きる形 (ちくま新書)

東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

これに関連して、酒鬼薔薇聖斗が生きた風景、神戸の郊外を尋ねた高山文彦『地獄の季節』も序でにマークしておく。
地獄の季節―「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所 (新潮文庫)

地獄の季節―「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所 (新潮文庫)

ところで、鷲田先生、自らの出生の地を明かしている――「京都駅の近く、西本願寺の北、醒ヶ井の別名、佐女牛井町」(p.277)。