増税 VS 国債?

承前*1

既に〈新聞〉ではないかも知れないが。
「ミズラモグラ」さんに教えていただいた『朝日』の記事;


復興財源「国債は最悪、税が当然」 首相ブレーン講演

2011年4月19日21時15分


内閣府経済社会総合研究所小野善康所長は19日、東日本大震災からの復興費の財源について、「国債は最悪。復興税でまかなうという主張が当然だ」と述べた。小野氏は国、地方で復興事業費は計約36.7兆円と試算。借金増は市場の信認を損なうとの考えだ。

 小野氏は菅直人首相のブレーン。この日、日本記者クラブで講演した。

 財源問題については「今ほど日本経済が大変な時はない。いつ返せるか分からない国債発行は(日本の財政に)一番危ない」と指摘。負担増を求めるなら、「どちらかと言えば消費税」とし、「みんなで(費用を)分かちあうことになる」との理由をあげた。

 菅政権は税と社会保障の一体改革の議論も進めている。小野氏は「復興予算は完全に独立した会計にすべきだ。(消費税がからむ)社会保障改革の議論は別途やるべきだ」とも語った。

 また、「今後、何か(災害が)起こった時に自動的に立ち上がる(復興税)制度をつくっておくべきだ」とも述べ、災害時に活用できる増税の仕組みの構築を訴えた。(鯨岡仁)
http://www.asahi.com/politics/update/0419/TKY201104190508.html

これについて、小野先生*2どうしちゃったの? という論争が起こっているかどうかは知らず。
国債は最悪」という小野氏の対極にいるのが高橋洋一*3ということでいいのだろうか。


「あらためていう。「震災増税」で日本は二度死ぬ」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2463
補正予算4兆円では一ケタ足りない。復興予算40兆円はこうすれば作れる」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2423
「「国債金利の上昇=日本国の破綻」は間違っている」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/505


最後に挙げたのは昨年4月のもの。
ところで、菅直人的な消費税増税路線に枝野幸男蓮舫は距離を置いているという記事もあり*4。また、ちらっと見た時事通信の記事によると、仙谷由人は消費税よりも所得税の引上げを強調しているらしい。
国債金利の上昇=日本国の破綻」かどうかということだが、自然現象と社会現象は違うということがある。放射能は危険だという信念が広まっても放射能は危険ではないという信念が広まっても、そのことによってウラン原子の振る舞いが影響されることはない。むかついたから放射線をもっと出してやろうとか、人間がかわいそうだから放射線出すのはやめようとか、ウランさんが考えている筈はない*5。それに対して、「国債金利の上昇=日本国の破綻」という知識(信念)の信憑性(plausibility)が高まるということは、(例えば)そのような〈状況の定義(definition of situation)〉に基づいて自らの投資戦略・戦術を決定する投資家が増えるということであり、それによってほんとうに「国債金利の上昇=日本国の破綻」が実現してしまうこともあり得る*6

さて、「復興」とは性格を些か異にするけれど、原発関連の基金設立は必要だろうと思う。もし日本人が原発続行を選択した場合、原発の経営主体に今回の福島の事故の被害金額と同額以上の金を予め強制的にデポジットさせ、それを公的に管理・運用する。他方、日本人が原発をやめることを選択した場合でも、原発の〈永代供養料〉としての基金が必要となるだろう。使わなくなった原発を誰が所有するのかという問題があるけれど、電力会社がそのまま所有し続けるとすれば、運転を停止して使われなくなった原発は稼ぎを上げずただただ維持・管理費を食うだけの不良資産となり、真面目に管理するインセンティヴが低下することも考えられうる。また、数百年後にその電力会社が法人として生きているのかどうかという問題もある。