承前*1
カトラー*2「3月11日以降の世界」http://news.livedoor.com/article/detail/5430612/
「我々はもう、3.11以前の世界に戻ることはできない」というのが主旨。また、「唯一わかっていることは、この世界に予測不能な制御できないリスクが存在しているということを認識した人類にとって、とれる行動は、そのリスクを認めた上で、リスクを分散する知恵をもつことでしかない」ともいう。さらに曰く、
今現在の取り敢えずの対策としての〈節電〉は必要なのだろうが、中長期的には、エネルギー供給体系そのものを上で指摘されている「スマートグリッド」をコアとするソフト・エネルギー・パスに移行するしかないのだろう*3。
電力関係者、政治家、メディア含めて、従来から原発がなければ、日本の今の快適な生活はあり得ないという言説をふりまいているが、それは大嘘だ。自然代替エネルギーの利用を怠り、スマートグリッドの導入でさえ鼻先で笑ってきた東電経営層の怠慢を隠蔽する言い訳として利用されてきたに過ぎない。今、日本国民は、一方的な強制停電によって、不自由な生活と経済の沈滞を余儀なくされているが、電力の問題でいえば、ピーク時の対応が問題なのであり、現在のように総量規制を押しつけられるいわれはない。インターネットのような分散制御型の電力システムに移行すれば、巨大な発電能力を持つ原発のような存在は最小限ですむか、不要となるだろう。もう一歩踏み込んでいえば、原発とは、地域独占企業体である電力会社の神殿のようなものであり、原発の安全神話とは、その体制を護ってきた一種のカルト宗教に他ならない。3.11により、それがガラガラと崩れ去ったことは、悲惨な現実の中にあって国民が得た唯一の収穫かも知れない。
それから、「ミズモグラ」さんに教えていただいた
DAVID JIMENEZ「日本の原発奴隷」http://www.jca.apc.org/mihama/rosai/elmundo030608.htm
西班牙の新聞El Mundoの2003年の記事。日本における原発労働のブラックな(所謂ブラック企業が白く見えてしまうような)実態について。長らく原発における労働を取材してきた写真家の樋口健二氏などの証言を含む。「原発奴隷」という言葉は知らなかったが、既に1970年代後半には堀江邦夫『原発ジプシー』という本が出ており、1980年代には原田芳雄扮する「原発ジプシー」が主人公の森崎東監督の『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』*4という映画もあったわけだ。それから、上の記事で語られている労働者のリクルーティングだが、幾重もの下請け構造におけるテンポラリーな労働力の調達と黒社会の介在というのはそもそも日本の土木・建設業界の存立条件であったわけだが。
生きてるうちが花なのよ?死んだらそれまでよ党宣言 [VHS]
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*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110313/1299983682
*2:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070904/1188884079 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080116/1200506920 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080203/1202065106 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080228/1204173728 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080307/1204908544 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080612/1213243483 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080921/1221927666 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090206/1233940977 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090208/1234020177 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090216/1234809963 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090519/1242706111 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090619/1245441165 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090621/1245524625 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090630/1246383965 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090712/1247372170 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090827/1251405021 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090908/1252380347
*3:「ソフト・エネルギー・パス」については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090915/1253031619で、「真に問題なのは、エネルギーの供給と分配の体制を集権的・独占的な〈ハード・エネルギー・パス〉から(30年以上前にエイモリー・ロビンスが唱えた)分権的で小回りの利く〈ソフト・エネルギー・パス〉へと転換する道筋を呈示すべきなのに、社民党も民主党もまだはっきりと明示していないということだろう」と述べたことがある。ところで、〈ソフト・エネルギー・パス〉が日本で紹介された頃、(ハードな)原子力や火力ではなくて(ソフトな)太陽熱や風力を使えというふうに問題が矮小化されて、これがシステムの問題であるということは等閑視されていたような気がする。
*4:森崎監督によれば、「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党」というのは文化大革命時代の上海にあった紅衛兵のセクトの名前から採ったということなのだが、中国語では何といったのか。