埃及余波

承前*1

『朝日』の記事から幾つか。リビア、イェメン、バーレーンイラククルド地区)への波及;


リビアで20人死亡 イエメン4人 止まらない中東デモ(1/2ページ)

2011年2月18日13時0分

【カイロ=貫洞欣寛、マナマ=古谷祐伸】チュニジアの政変に端を発する中東での市民デモの連鎖が止まらない。カダフィ大佐による事実上の独裁体制のリビアでは17日、同国第2の都市ベンガジなど複数の都市でデモ隊と治安部隊が衝突し、AP通信によると計20人が死亡した。イエメンでも、南部の反政府デモで4人が死亡。イラク北部クルド地域でも、地域政府を批判するデモがあり、2人が死亡した。

 リビア北東部ベンガジでは17日、民衆数千人が集結し、カダフィ大佐の写真を破りながらデモを続けた。政権側は反体制デモを認めず、首都トリポリでは逆にカダフィ大佐支持のデモが動員された。

 イエメン南部アデンでは、約3千人の反政府デモ隊に治安部隊が発砲。ロイター通信によると、これまでに4人が死亡、17人がけがをした。首都サヌアでも、サレハ大統領の辞任を求める約2千人の反政府デモ隊と大統領支持派が衝突し、少なくとも40人が負傷した。

 イエメンでは貧困や失業問題のほか、再分離・独立を求める南部と北部中央政府との対立などもからみ、不安定な状況が続いている。

 イラク北部クルド地域のスレイマニアでも同日、強い自治権を持つクルド地域政府のバルザニ大統領が率いるクルド民主党(KDP)の建物に投石したデモ隊3千人と治安部隊が衝突し、AFP通信によると2人が死亡した。

 政府がデモ隊の武力鎮圧に乗り出したバーレーンでは17日夜、同国と近隣諸国の外相が緊急会合を開き、バーレーン政府を支援することを確認する声明を出した。AFP通信によると声明は「我々(湾岸諸国)の治安は一緒に守るべきもので、外国勢力の介入は受け入れられない」との内容。バーレーンのほか、オマーンカタールサウジアラビアアラブ首長国連邦の各外相が出席したという。
http://www.asahi.com/international/update/0218/TKY201102180181.html


18日朝には、バーレーン政府の武力鎮圧で死亡した犠牲者の葬儀が予定され、多くの市民が参列する予定。新たな衝突が起きる可能性がある。

 バーレーンの情勢悪化は、周辺国に飛び火する可能性がある。バーレーンは、国民の多数をイスラムシーア派が占めており、シーア派のイランによる介入を各国は警戒しているとみられる。

 首都マナマの中心部にある真珠広場で14日に始まった民衆のデモは、主にシーア派住民が、少数派スンニ派の王政が任命した政権の長期化などに抗議している。17日未明には、治安当局がデモ隊を暴力的に排除して、少なくとも3人が死亡した。広場は封鎖され、軍の戦車や装甲車が周辺に配備されている。

 国営テレビは17日、内務省の調査によって広場から複数の刃物や銃が見つかったと報じた。批判を浴びている鎮圧についても、十分な警告をした上で実施した合法的なものだったと、内務省の担当者は鎮圧時の録画映像をもとに説明した。
http://www.asahi.com/international/update/0218/TKY201102180181_01.html


リビア反政府勢力、東部の町占拠 政府側、奪還へ兵増強

2011年2月19日22時55分

【カイロ=貫洞欣寛】民衆デモが広がるリビアで、東部の町を反政府勢力が占拠するなど、緊迫した状況が19日も続いている模様だ。40年以上独裁を続けてきたカダフィ体制は、強権的な手法で反政府運動を抑え込んできたが、一つの町を掌握されるのは極めて異例な事態。カダフィ体制最大の危機に直面しているとの見方が広がっている。

 海外に拠点を置く反政府勢力などの情報によると、東部ベイダでは18日、反政府勢力に一部警察部隊も合流して市内を掌握した。これに対して政府側が外国人傭兵(ようへい)部隊などを増強し、奪還を図っているという。

 地元治安当局者は19日、ロイター通信にベイダや東部ベンガジで衝突が続いているとしたうえで、「ベイダからベンガジまで8割は我々の掌握下にある」と述べ、奪還できていない地域があることを認めた。ジュネーブ在住の反体制派アティア氏によると、ベイダはカダフィ氏が革命で倒したイドリス国王一族の出身地のうえ、各種のイスラム勢力も強く、従来、反カダフィ感情が根強いという。

 ベンガジでは19日早朝、裁判所前でカダフィ体制の打倒と民主化を求めて泊まり込んでいた裁判官や弁護士らを含む反政権デモ隊数百人を特殊部隊が催涙ガス弾などで攻撃、死傷者が出ているという。同地では18日、前日のデモに加わり死亡した14人の葬儀がそのままデモとなり、警察署などに放火してラジオ局を攻撃するなど騒乱状態となり、その後も混乱が続いている模様だ。

 ジュネーブ在住のリビア反体制派メスラティ氏によると、ベンガジではもともと反中央政府の意識が強いうえ、17日に民主化を求める集会を開こうとしたところ、治安部隊が強圧的な取り締まりを行い、衝突に発展したという。

 同氏によるとベンガジでは18日に刑務所の受刑者が釈放され、19日には全ての警官が姿を消した。「エジプトのムバラク政権と同じように、リビアの体制側も警察を引かせて暴漢を動員し、反体制派を襲わせようとしている」との見方を示した。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは18日、これまでに少なくとも84人が死亡したとして、リビア政府に武力行使をやめるよう求めた。実際の死者数はさらに多い可能性がある。

 リビアは外国報道陣の入国を制限し、地元報道機関も管理しており、ベンガジなどでの直接の取材は不可能な状況だ。中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、リビアで同局の視聴が妨害されているという。19日にはインターネットが切断され、携帯電話もつながりにくい状況だ。
http://www.asahi.com/international/update/0219/TKY201102190336.html


バーレーンデモ「打倒王室」に 政府の武力行使に反発

2011年2月20日0時45分

 【マナマ=古谷祐伸】ペルシャ湾産油国バーレーンの反政府デモは、政府側の鎮圧により、19日までに6人が死亡、負傷者は200人以上となった。政府側が武力行使に踏み切ったことで、当初、民主化や政治改革を求めていたデモが、「王室打倒」に変化、ハリファ王室の基盤を揺るがす事態となりつつある。

 軍は19日午後1時過ぎ、首都マナマ中心部の真珠広場に展開していた数十台の戦車や装甲車を撤退させた。広場は14日からデモ隊が占拠を続けていたが、17日未明に治安当局が催涙弾やゴム弾を使ってデモ隊を一掃した。さらなる衝突を回避するため、軍は撤退を余儀なくされた形だ。

 午後3時半過ぎ、警察も撤収を始めた広場に市民数千人が戻り、再び占拠する構えを見せている。ハマド国王は18日、サルマン皇太子を交渉役に任命して、デモ隊との対話姿勢を示したが、デモ隊側は拒絶している。市内中心部の占拠が再び長期化すれば、王室・政府の威信は大きく傷つくことになる。

 今回のデモの背景にあるのは、イスラムスンニ派シーア派の対立だ。実権を握る王家のハリファ家はスンニ派だが、国民の多数派はシーア派シーア派は就職差別などを受けており、これまでも権利拡大を要求してきた。デモ参加者はシーア派住民が主体で、民主化拡大や在任40年に及ぶ王室出身ハリファ首相の更迭、議院内閣制の導入などを訴えてきた。

 しかし、政府は17日に戦車などを繰り出して鎮圧に乗り出し、3人が死亡、100人以上が負傷する惨事に発展。さらに、デモに参加して亡くなった市民の葬儀に参列した数千人の一部が18日、戦車などで封鎖された真珠広場にさしかかったところ、軍が銃撃し、70人以上が負傷。デモ隊の間には、「王室打倒」の声が一気に高まった。

 バーレーンの隣国で世界最大級の産油国サウジアラビアにもシーア派住民がいる。同国では少数派だが、油田地帯が広がる東部に多い。バーレーンでのデモが激化すれば、サウジのシーア派が呼応し、石油生産に影響が出る可能性もある。
http://www.asahi.com/international/update/0219/TKY201102190337.html

そして、上海;

上海で大学生ら4人を当局連行 デモ呼びかけを封じ込め

2011年2月20日16時29分

【上海=奥寺淳】上海市の中心部の繁華街で20日午後2時(日本時間同3時)すぎ、民主化を求めるデモの呼びかけに応じて集まっていた男子大学生ら少なくとも4人が警察に連行された。中国では、中東で政治改革を求める民衆のデモが相次いでいるのを受け、ネットなどを通じて20日午後2時から全国各地で、「中国茉莉花ジャスミン)革命」と名付けた一斉デモが呼びかけられていた。

 北京でも、デモが呼びかけられた中心部の繁華街に厳重な警備が敷かれ、少なくとも男性2人が連行された。遼寧省瀋陽四川省成都広東省広州などの主要都市も同様で、この5都市ではデモは発生しなかった。

 上海で連行された大学生は少なくとも3人。そのうちの1人は連行前、記者に「活動に参加するために来た。このまま何もしなければ、この国は永遠に変わらない。第一歩を踏み出すために、自分はここに来た。なにか活動があれば、自分は見るだけではなく、参加する」と話していた。「両親には絶対に行くなと言われたけど、それでも行くと言った」とも語った。

 その後、大学生は警戒にあたっていた警察官に「何をしている」と聞かれ、肩をつかまれた。まわりの大学生らが「やめろ」などと言って割って入り、現場は混乱に陥った。大学生ら3人は数十人の警察官たちに囲まれ、髪を捕まれたり、両脇を抱えられたりしながら、近くの警察署に連行された。その際、大学生の1人は何かを叫びながら、ピースサインをして見せた。

 3人の連行後、警察署前では法治の不備などを訴える年配の男女数十人が集まり、抗議活動を始めた。男性の一人が報道陣に対し、「この国には人権も法治も自由に話す権利もない。警察は好き放題、市民を逮捕する。これが中国の実態だ」と大声で叫んだ。市民はネットの呼びかけを見て集まったという。その後、年配の男性が警察署に連行された。
http://www.asahi.com/international/update/0220/TKY201102200222.html