承前*1
自分の趣味に合うか合わないかは別にして、1980年代を代表するヴィジュアル・イメージは何かと考えたら、鈴木英人*2と永井博*3のイラストレーションが思い当たった*4。鈴木英人は何よりも山下達郎の『FOR YOU』のジャケットを手がけ、さらに中学の英語の教科書の表紙や男性用シャンプーのボトルのイラストレーションも描いていたと思う。この人は主に米国の街の光景*5をネタにしていたのだけれど、いちばん印象が強かったのは、背景というか空の、昼なのか夜なのかわからないような、仏蘭西語ではnuit americaineと呼ぶんじゃないかという感じの青。永井博の場合、代表作といえば、やはり大瀧詠一の『A LONG VACATION』のジャケットということになるのだろう。やはり青々とした空を背景としたプール。鈴木英人の場合看板や信号機は描かれるが人物は回避されているのと同様に、永井の絵でもプールで遊ぶ人物は排除され、プールの水面こそが絵の中心となっている。宮迫千鶴さん*6が『イエロー感覚』で指摘していたようにも思うのだが、こうした〈デオドラントされた米国〉というべきイメージの先駆は1970年代の”Lonesome Carboy”というコピーの下でのパイオニアのカー・ステレオの広告の写真表現じゃなかったか。さて、この2人がつくりだしたイメージが「ヒロ・ヤマガタ」的なもの、「ラッセン」的なものに繋がるのかどうかはわからない。今書いたように、この2人の場合、描かれているのは看板とかプールといった〈人造物〉であって、〈自然〉ではない。そこがラッセン的世界と違うところだ。また、ヒロ・ヤマガタはもっともっと人間くさいといえる。イメージのけばさということだと、SF的或いは古代的なイメージをネタにしているにも拘わらず、喜多郎やアース・ウィンド&ファイアなどのジャケットを手がけていた長岡秀星*7の方が「ラッセン」的なものに近いか。
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イエロー感覚―不純なもの、あるいは都市への欲望 (1980年)
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*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101105/1288930585 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101106/1289015746
*3:http://hwbb.gyao.ne.jp/mochips-pg/
*4:わたせせいぞうはどうよという人もいるかも知れないが、この2人に比べれば印象は薄い。
*5:〈自然〉ではないことに注意。
*6:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080622/1214156698