非実在たち

承前*1

いったい〈非実在高齢者〉は何人*2いることになるのか。
『読売』の記事;


姫路でも天保生まれ「170歳」超高齢906人

 高齢者の所在不明問題を巡り、兵庫県姫路市は26日、江戸時代の天保11年(1840年)生まれで170歳の男性を最高齢に120歳以上の高齢者906人が、戸籍上生存した状態で残っていることを明らかにした。


 住民基本台帳には登録されておらず、年金などの行政サービスは受けていなかった。
(2010年8月26日18時38分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100826-OYT1T00829.htm


ついに186歳!勝海舟の1歳下「戸籍上生存」

 高齢者の所在不明問題を巡り、戸籍上は生存する江戸時代生まれの人が26日も相次いで明らかになった。


 山口県防府市は文政7年(1824年)生まれの186歳男性の戸籍が残っていると発表した。この前年に勝海舟が生まれている。

 滋賀県甲賀市でも文政11年(1828年)生まれの182歳男性、山形県酒田市天保8年(1837年)生まれの173歳女性の戸籍があった。

 兵庫県姫路市によると170歳男性を含め120歳以上の906人が戸籍上生存。川崎市も戸籍上120歳以上が462人で、住民票はなく、年金などは受けていない。

 いずれの自治体も法務局と相談し除籍を検討する。
(2010年8月27日03時02分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100826-OYT1T00819.htm


除籍作業後回し、紙だけで生きる超高齢者


 紙の上だけで生きる「超高齢者」の存在は、煩雑な除籍作業や戸籍の管理システムなど様々な要因が絡む。

 今後、全国の自治体でさらに広がるとみられ、戸籍制度のあり方が問われる事態となっている。

 戸籍の源流は、1871年に制定された戸籍法にさかのぼる。翌72年に初の全国戸籍調査が行われた。現在は、本籍地を置く市町村が、法務省からの委任事務として管理する。

 死亡届が出された場合、本籍地と住所地で連絡を取り合い、戸籍と住民登録を抹消する。問題になるのは、所在不明の場合だ。

 住民登録の抹消は、各自治体が所在不明を確認すれば、独自の権限で行える。だが、戸籍の場合、法律上、市町村に除籍する義務はない。市町村が法務省に除籍の申請を行い、同省の許可を受けることが必要で、市町村は手続きを後回しにしがちだという。

 もう一つの要因として、仮に戸籍が除籍されないままでも、当人の家族や市町村側に不利益や不都合がないことがある。

 戸籍は遺産相続などに利用されるが、年金や介護・福祉などの行政サービスは住民登録に基づいて提供される。戸籍に誤りがあっても、支給漏れや不正受給は起こりえないため、自治体側は「積極的に除籍を進める必要性は薄い」という。

 今後、ほかの市町村でも調査が進み、「超高齢者」の人数が膨らむのは必至だ。しかし、戸籍を紙で管理している自治体からは「書類を一つ一つ精査して、すべてを調査するのは不可能。何歳の人が何人いるか、想像もつかない」(大阪府松原市)との声も上がる。住民登録の時と同様、全体像を把握するのは困難とみられ、戸籍そのものの信頼も揺らぐことになりそうだ。
(2010年8月26日09時48分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100826-OYT1T00204.htm

非実在の最高齢は理論的には近代戸籍制度ができた1871年の時点での最高齢者ということになるのだろう。また、文政年間や天保年間に生まれた人が死亡したのは(普通に考えれば)戦前、早ければ明治年間だと考えられるので、こうした問題は戦前から綿々と存在していたことになり、戦後民主主義が悪いとか、そういった当て擦りは根拠を失うことになる。それから、〈非実在高齢者〉が戸籍に残っていても行政事務や社会保障には支障を来たしていないようであり、「戸籍そのものの信頼も揺らぐことになりそうだ」というより戸籍制度なんて要らないんじゃないかという声が大きくなるのでは? 戸籍制度が様々な差別を温存しているということはあるわけだし。

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100826/1282788679

*2:柱という単位を用いるべきかも知れない。