峰/嶺/根

http://d.hatena.ne.jp/yomoyomo/20100624/takane


日本の新聞では「高嶺の花」が「高根の花」になっている。「嶺」という字が「常用漢字」でないため。恥を晒すと、私は一時高値の花だと思っていたことがありますけど。ともかく、新聞屋に「日本語の乱れ」を云々される筋合いはないというのはその通り。
さて、「高嶺の花」が「高根の花」になったのには、ミネはそもそも「御根」であり、つまり嶺と根は同義だという理屈もあるという。たしかに『広辞苑』を見てみると、「ね」という語には峰、嶺、根という3つの漢字を宛てることができるとされている。因みに、ミネのミ(御)は神聖さを表す接頭辞だろう。ミチ(道)のミと同様に*1。まあそれはわかるのだけれど、ぴんとこない。というか、私の空間感覚が捩れてしまう。ミネというと山のてっぺんで、方向としては上。根は地下にあるもので、方向としては下。上であるとともに下。ミネは漢字では峰*2や嶺に対応する。峰にしても嶺にしても、そこからイメージされるのはけ険しいこと、とんがっていること、つまり鋭角的であることだ。峰(feng)と旁と発音を共有する字としては、鋒や蜂がある*3。鋒は矛先という意味。蜂の針もまたとんがっているよねとこじつけてしまおう。ここで注意すべきなのは鋒に先頭・先端という意味があることだ。嶺(ling)に対しては領。領は多義的な字だけれど、その中で率いるという意味がある。方向は上下逆でも、ミネもネも伸びてゆく先端という共通性はある。しかし、(少なくとも現代中国語においては)嶺や峰と根との関係は見当たらない。また、大和言葉において嶺や峰と根がどう関係するのかというのもわからない。ということで、私にとって、嶺と根のトポロジーはこんがらがったままなのだ。
船橋市高根木戸という地名があるが、その語源って何? と不図思った。
See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080422/1208856877 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080702/1215017909 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080423/1208917541

*1:チだけで道(road)という意味がある。例えば、路はチやヂと訓ずる。木曽路(キソヂ)、また三十路(ミソヂ)。

*2:峯は峰の異体字

*3:逢や縫は現代のマンダリンではアクセントを異にする。