烏龍茶の起源

承前*1

皮的里「鳳凰與烏龍」『02』2010年3月号、pp.27-29


烏龍茶の起源神話は、福建省を中心として、広東省浙江省江西省安徽省に分布する畬族という少数民族の起源神話と関係している。それによると、畬族発祥の地であり、「烏龍茶」発祥の地であるのは、広東省の潮州に近い鳳凰山
「青龍」と「烏龍」という兄弟がいたという話;


青龍和烏龍是一対孿生兄弟*2、都是南海龍王之子。
一日、青龍化身独自上岸游玩、適逢人世間有盛会、他十分留恋、便不想回去当龍子、投胎大耳媽成為龍麒。龍麒很勇猛、為高辛帝解除危難、除掉番王的叛乱、保衛了中原、立下大功、被封駙馬*3、賜名盤瓠。成婚後、為自食其力、盤瓠與公主不遠万里、到鳳凰山安家落戸、成為中国畬族的始祖。盤瓠與高辛氏生下三男一女、過着刀耕火種*4、深山狩猟的幸福生活。
這事伝到了哥哥烏龍那裏、勾起了他羨望的心情、便沿着韓江遡流而上、尋上鳳凰山来、進入一個花果飄香、美麗富饒的山間世界。烏龍見過嫂嫂高辛氏、又見到結実健壮盤、藍、雷三姪*5、但不見哥哥青龍(也就是盤瓠)。当得知盤瓠已進深山打猟、他追不及待地上山去找哥哥。
在山上、烏龍遠遠地看見盤瓠正在追趕一只老山羊、他想與哥哥開個玩笑、便変成一条又粗又老的黒須藤*6、横臥在路上。盤瓠只願追趕前面的老山羊、没注意脚下、被黒須藤重重絆了一跤、掉下万丈深淵、烏龍見状、急忙現身下淵馱起哥哥回家、但盤瓠已是気絶身亡。
烏龍悔恨交加、遂重変黒須藤、欲求嫂姪一家諒解。不料老大盤氏怨気衝天、搶起大刀猛砍黒須藤。烏龍負痛現出原形、但見尾巴已断、鮮血淋灕、残尾仍為古藤。烏龍転念一想:兄長因它而死、自己也已身残、活着也無用、不如化成茶樹、向嫂姪一家贖罪。於是、烏龍飛向山頂、抖落身上的鱗片、変成一株株的茶樹、漫山遍野遂長満了碧緑的烏龍茶樹。
這様、才有了烏龍茶、併代代相伝、不但鳳凰山繁衍生殖、還随着畬族的大遷徒、又伝到福建、浙江、台湾等省。(p.27)
但し、これは現在の茶の製法としての烏龍茶の起源ではなく、烏龍茶樹という茶樹の亜種の起源宋朝の末期に、茶葉が鳥の嘴のように尖っている「紅菌茶樹」が発見され、ちょうど元軍に追われて潮州に逃走中の皇帝に献上したところ、その味を絶賛したので、後に「宋種」または「宋茶」と呼ばれた。以後、烏龍茶樹の栽培は衰え、栽培種としては「宋種」が主流を占めるようになった(p.29)。
現在の半発酵茶としての烏龍茶の起源に関する伝説として、以下のような話が紹介されている。清朝雍正年間、福建省安渓県西坪郷南岩村に蘇龍という男がいて、色黒だったので村人から「烏龍」と呼ばれていた。或る春の日、「烏龍」は鉄砲を担いで山に茶摘みに出かけた。昼頃、「烏龍」は山中で獐(ノロ)を見かけて鉄砲で撃った。傷を負った獐は山奥に逃げたが、「烏龍」は追いかけて遂に仕留めた。しかし、獲物を担いで家に帰る頃には既に日は暮れていた。その夜は獐を捌いて・食べるのに忙しく、「製茶」のことはすっかり忘れていた。翌日、一夜放置した茶葉を煎ってみると、茶の苦み・渋みが消えていた。「烏龍」はその味を再現しようとして試行錯誤を重ね、半発酵という製法を思いついた(ibid.)。

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091006/1254808152 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091007/1254929417

*2:双子の兄弟。

*3:皇女の夫、皇帝の女婿。

*4:焼畑農業を謂う。

*5:漢語の姪は、日本語とは性別が逆で、兄弟姉妹の息子、つまりオイ(甥)を指す。日本語のメイは姪女。

*6:籐?