収支計算など

http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20100309/1268138091


鳩山内閣原子力発電推進に傾いているという。
ところで、種々の発電方式を比較する場合によく持ち出されるのがエネルギー収支の計算で、それによると原子力発電というのはクリーンになるのだとか。しかし、何時も疑問に思うのは、その収支計算に例えばウランを掘り出したり・精製したりするためのエネルギーのコストは含まれているのかということ。それは、例えば石油を採掘して・精製するよりもかなり大きなエネルギーを要するのではないかと素朴に思ってしまうのだ。かつては原発は「トイレのないマンション」だということがよく言われたが、汚染された廃棄物処理問題についての議論も(私の無知のせいかもしれないが)最近はあまり聞かない。勿論、上の記事で指摘されている鉱物としてのウランの稀少性の問題もある。
さて、


では、原子力を拡大せずにどうすればいいのか?

答えは、ドイツが行っているような対策を“一足飛び”に行う事。とりわけ途上国において。

例えば、中国の大都市圏で、再び自転車をメインの交通と位置づけてもいいはずだ。少なくとも、20年前はそれでやっていたのだし、オリンピック開催中、北京市内をそうしたら、大気汚染も減り、渋滞も解消した。その方が「合理的」にも関わらず自家用車による都市内交通に拘る彼らを呪縛しているのは、「先進国の生活へのあこがれ」だ。だとしたら、先進国の側が(とりわけアメリカが)、あこがれとなる、見本となる、生活を適したものに変える必要があるのは当然だろう。

北京についてはよくわからないが、上海の場合、モータリゼーションの昂進は郊外化と関係があると思う。人口の比重が中心部から周辺部に移っているにも拘わらず、地下鉄などの公共交通の整備が追いついていない。郊外化とモータリゼーションの連動というのは中国だけでなく、日本でも共通しており、郊外化ということ自体、三浦展(『「家族」と「幸福」の戦後史』)がいうように、アメリカナイゼーションの一形態なのだろうけど。偶に郊外に豪邸を構えた人を訪ねたりすると、広くていいなと思う反面、日常的な買い物にも、また上海の中心部に行くにも大変で、これだったら千葉に住んでいた方がもっとマシかもとも思ってしまう*1。ところで、自転車の復権というのも上海では始まっていて、2008年に上海の国有自転車メーカー「永久」などが浦東の張江に公共レンタル自転車ステーションを設置したが、現在レンタル・スポットは市内40箇所に増えている。手続と決済はデポジット・カードで行い、料金は1時間当たり1〜3元*2。そういえば、上海から瞬く間に自動車を追放してしまったのはかつての日本軍。JG. バラード*3の回想によれば、1941年12月の太平洋戦争開戦と同時に上海を占領した日本軍は外国人が所有する自動車を没収してしまったので、バラードの父親は四川路の自分のオフィスに通勤するために、自転車を買わなければならなかったという(JG Ballard Miracles of Life*4, p.55)。
「家族」と「幸福」の戦後史 (講談社現代新書)

「家族」と「幸福」の戦後史 (講談社現代新書)

Miracles of Life

Miracles of Life

そういえば、雲南に帰ったとき*5、ソーラー・パネルが急速に普及しているのに驚いた。省政府の景気刺戟政策によって、ソーラー・パネルを買うと、代金の1割だか2割だかを補助金として貰えるのだとか。