H&K

先ず「朝鮮学校」が「高校授業料無償化法案の対象」から排除されないことになったということは*1取り敢えずはいいことだろうと思う。
さて、この問題に関する橋下徹*2城内実*3の発言。
橋下発言を伝える『朝日』の記事;


肖像画・資金の流れ確認 橋下知事朝鮮学校視察で方針

2010年3月10日


 朝鮮学校を高校授業料の実質無償化の対象に含めるかどかをめぐり、大阪府橋下徹知事は10日、報道陣に「資金と役員。(朝鮮総連との)人的つながりと金銭的つながりが重要な要素(になる)」との考えを示した。今後、朝鮮学校を視察する際には「政治と教育が区分けされているか確認する」と述べた。

 知事は「教室に不法な国家のリーダーの肖像画を掲げている学校であれば認められない」とも述べ、北朝鮮金正日キム・ジョンイル)総書記の肖像画が教室にあるかどうかも確認する意向。「朝鮮総連との今後のかかわりについて宣誓書をとるのかもポイント」と主張した。

 さらに「不法な国家体制とつきあいがあるなら、僕は子どもたちを取り戻し、ちゃんと正常な学校で学ばせる。そうしないと朝鮮の皆さんに対する根深い差別意識大阪府からなくならない」とも語った。
http://www.asahi.com/kansai/sumai/news/OSK201003100057.html

たしかに北朝鮮という国家体制が糟であるというのはいうまでもないが、それを「不法な国家体制」と言ってしまうのは法律家としてどうなのか。取り敢えずは国連加盟国である。また、北朝鮮が「不法な国家体制」であるなら、国連による北朝鮮への制裁というのは無意味だということになる。存在そのものが「不法な国家体制」に対して国連が制裁するというのは不可能であろう。喩え話をすると、資格それ自体が「不法」な弁護士がいたとしたら、彼/彼女に対して弁護士会が懲戒処分を下すというのは不可能且つ無意味であろう。
最後の引用だが、「ちゃんと正常な学校で学ばせる」というのはどういう意味なのか。大阪府立の「朝鮮学校」を作るという意味なのか。また、「朝鮮の皆さんに対する根深い差別意識」云々というけれど、それに対して北朝鮮の存在が影響しているとはいえるのだろうけど、「根深い差別意識」というのはDPRKが建国される以前から存在している。さらに、例えば熱湯浴の連中にとって、「差別意識」が向けられる方向というのは南北或いは体制の違いを問わないように見えるので、北朝鮮を主犯に仕立て上げることはできないだろう。
それから、「無償化」というのは国政レヴェルの話であり、府知事がこのように介入するとしたら、(下で言及する城内実の言い回しを借用すれば)「限度を超えた」地方自治といえるだろう。
城内発言を伝える『産経』の記事;

金日成崇拝教育の学校」 城内議員、朝鮮学校の無償化に疑問
2010.3.10 19:04


 朝鮮学校の授業料無償化問題をめぐり、城内実衆院議員(無所属)は10日の衆院文部科学委員会で、「(朝鮮学校は)金日成を崇拝しない人は人ではないと教えている。限度を超えた民族教育に国税を投入するのはいかがなものかと思う」と疑問を呈した。

 同委員会で城内議員は平成4年4月号の月刊誌「正論」を取り上げ、「刑務所に送られて処刑する直前に『金日成万歳と言う』ことが、朝鮮学校の国語の教材に記されていると(正論に)書かれている。(この文書は)18年前に書かれたものだが、私は今もあまり変わっていないと思う」と指摘した。

 そのうえで「金日成を崇拝しない人は人ではないというのは逆に差別を助長し、個人崇拝を強制しているという意味で憲法が保障する思想、信条の自由に反する」と朝鮮学校の教育姿勢を批判。「ここまでくると民族教育の限度を超えており、国民一般の感情として、こんな教育に国民の税金を使うのはいかがなものか」と述べ、川端達夫文科相に対し、朝鮮学校の実態調査を実施するよう求めた。

 これに対し川端文科相は「文科省としては、今おっしゃいました実態の話、あるいは国民感情の問題、あるいは外交上の配慮等々を(無償化対象の)客観的判断に組み込むことは前提にしていない」と述べ、城内議員が指摘した朝鮮学校の実態は、無償化の判断基準にあたらないとの姿勢を示した。
http://sankei.jp.msn.com/life/education/100310/edc1003101907005-n1.htm

城内実のロジックが通用してしまうと、私立の学校、特に宗教系の学校にとっては大きな脅威となるだろう。「国民感情」と称される集合的恣意を名目として、国家が教育の内容に介入し、その存亡が左右されてしまうという可能性が開かれてしまうからだ。その意味で、そういったことは「客観的判断に組み込むことは前提にしていない」と答えた川端達夫は取り敢えず正しいといえるだろう。

*1:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100311/plc1003110119000-n1.htm

*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080208/1202401465 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080209/1202541178 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080219/1203440787 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080307/1204904221 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080623/1214242989 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080624/1214278073 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080908/1220885018 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081029/1225285895 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081207/1228581254 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090109/1231466496 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090629/1246267379 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091015/1255629124 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091129/1259466366

*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081201/1228105248 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090327/1238126481 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090729/1248869190 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090731/1248969633 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090804/1249405632 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090805/1249492266 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090808/1249714415 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090809/1249835813 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090813/1250162720 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090910/1252567925 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090912/1252732340 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090914/1252865497 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090915/1252981143 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100104/1262603428 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100131/1264951293 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100220/1266635022 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100226/1267115264