爵士上海

承前*1

10月17日と18日は浦東の世紀公園で開かれた「爵士上海音楽節」*2へ行く。静安公園で開かれた去年*3とは違って、今年は両日とも好天。但し、川向こうなので、自宅から少し遠いが。今年は「爵士舞台(Jazz)」と「揺滾&民謡舞台(Rock & Folk)」と「電音公園(Electrograss)」というふうにステージが分かれている。私は専ら「揺滾&民謡舞台(Rock & Folk)」。
17日は最初のSugar Mama & the Royal Hombresを聴き逃して、王嘯坤*4から聴き始める。1988年河北省石家荘生まれ。彼のことはよく知らなかったけれど、〈アイドル〉であるらしく、会場も若干〈アイドル・コンサート〉ぽい雰囲気。しかし、普通にロック。それから、Jazz Latino。上海のラテン・バンド。サルサを聴かせる。最初、バンドのコンビネーションがいまいちだと思ったけれど、ヴォーカルの男女が加わってからのパフォーマンスは素晴らしかった。そして、この日の目玉であろう張懸*5が登場する頃には辺りも暗くなっていた。張懸にはもうちょっとアコースティックな、フォーク的なものを期待していたのだが、この日は(1曲を除き)ディストーションのかかったヘヴィなロック・サウンドを貫く。その次は、南アフリカ共和国のバンド、Freshly Ground*6。この2003年に結成された南アフリカ出身のバンドの魅力は如何に表現すべきか。小柄なヴォーカリストのZolani Maholaは客を煽るのが巧くて、ビートは基本的にファンクなのだけど、Simon Attwellのフルートはジェスロ・タル辺りのプログレを連想させ、Kyla Rose Smithのヴァイオリンはやはりケルト音楽を連想させ、Julio "Gugs" Sigauqueはブルージーなギターを弾きまくる。そんな感じ*7。この日は、鄭鈞*8はパスして、夕食をつくるために帰宅。そして、この日のことを blogに書こうとも思ったのだが、加藤和彦の死*9に吃驚したこともあって、結局止めた。
18日は先ず冷酷仙境*10。冷酷仙境を略半年ぶりに観ることができただけでも感激。また、今までライヴ・ハウスという環境でしか観たことがなかったので、大きめの、しかも野外の空間ではどうなるのかなとも思っていたのだが、音のキレやダイナミックさは変わらず。この日は、特に昨年加入した米国人ベーシストSeppo M. Lehtoの演奏が冴えていた。次いで、Lions of Puxi(浦西的獅子)*11。上海在住の仏蘭西人を中心としたレゲエ・バンド。ピンク・フロイドの”Wish You Were Here”*12をレゲエにアレンジしたのは吃驚。そして、締めはスティングの”Englishman in New York”を中国語でカヴァーした「上海的法国人」。次は中国のフォーク・シンガー、曹方*13アコーディオンをフィーチャーし、本人もピアニカを吹く。リラックスした感じで心地よい。それから、張楚*14。1990年代初頭から活動している中国ロックの重鎮の1人。一見すると、冴えないおっさんなのだけれど、彼の歌は凄い。サウンド面での革新も怠っていないことに関心。辺りがすっかり暗くなると、大御所の崔健*15の登場。崔健の凄さというのは、ロックのみならず、ジャズ、ファンク、ラップ、テクノといった、ここ30年の間に中国に流入した様々な音楽要素が彼の身体に集中し、それらが驚くべき強度で表現されていることだろう。地元上海のジャズ・ミュージシャンをホーン・セクションとして配した曲を途中に挟む。崔健を聴いた興奮を冷まそうと、「爵士舞台」に行き、Catherine Lambert*16のステージの後半部を聴く。彼女は濠太剌利人で、『ロスト・イン・トランスレーション』でセンチュリー・ハイアットのバーの歌手を演じていた人。オーソドックスなジャズ・ヴォーカルを聴かせてくれる。彼女は歌も巧いけれど、それ以上にバンドを煽るのが巧い。
帰宅したのは夜の10時頃。


王嘯坤

Jazz Latino


冷酷仙境

曹方