『武状元蘇乞児』

何か気分がlowになったときに周星馳(Stephen Chow)*1の映画を観るというのはすごく効く。
陳嘉上(Gordon Chan)監督、周星馳主演の『武状元蘇乞児』(1992)を観たのは先々月だったが、少しメモ(ネタバレあり)。
「蘇乞児」は清代に実在した武術家で、既に幾本も映画になっているし、周杰倫主演の新作が近々登場するらしい。
この映画は〈ニート映画〉とか〈ホームレス映画〉というジャンルがあるとすれば、かなり上位にランキングされるべき映画だろうと思う。前半が〈ニート映画〉で、後半が〈ホームレス映画〉。周星馳演ずる主人公は、広州の将軍の息子で、武術は強いが学問は全く駄目で読み書きもできない。親の金で遊びまくっている。或る日、遊郭で張敏演ずる遊女に一目惚れするが、彼女は武官の科挙に当たる武試に首席で合格すれば、つまり武状元になれば、一緒になってもいいという。周星馳は彼女を某皇族と争ったが、実は彼女はその皇族の腰巾着みたいな男を親の仇として付け狙っていた。また、その男は裏で邪教を主宰し、皇帝暗殺を企んでいた。周星馳は武試を受験するために一家を挙げて北京に移り住む。読み書きができないので、筆記試験では替え玉が書いた答案を提出することになる。武試のシーンは殆どオリンピックのノリで、爆笑物。周星馳は何とか首席合格するが、筆記試験の不正がばれて、合格取消、さらに家財没収の上、一生乞食をすることを皇帝直々に命じられてしまう。後半では、屋敷を追い出され、廃寺に寝泊まりするようになる。さらには、全身の筋を切られて寝たきりの状態になってしまう。しかし、悟りを開き、脱力的な秘技を習得し、丐幇(乞食ギルド)の首領になり、再会した張敏や乞食ギルドとともに皇帝を暗殺の危機から救い出す。最後に、皇帝は乞食ギルドを解散するように頼む。しかし、蘇乞児は、それはあんた次第だという。善政を施して人民が幸せになれば、乞食の数は自然と減る。皇帝は、朕の面子を立てて褒美くらいは受け取ってくれという。賜った褒美は黄金の乞食許可証だったというのが落ち。言い忘れたが、呉孟達が演ずる蘇乞児の父親のバカ親ぶりが素晴らしい。
中国語のタイトルは『武状元蘇乞児』、英語のタイトルはKing of Beggars、どちらも乞食の物語であることが明示されている。しかし、日本語では『キング・オブ・カンフー』と、或る意味でどうでもいいタイトルになっている。何かタブーでもあるのか。

See also
http://pub.ne.jp/cardhu/?entry_id=823991
http://blog.livedoor.jp/no_go_tabi/archives/51812582.html
http://nan.under.jp/chow_filcom32.html