http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20051006/1128583365
という部分を取り敢えずメモしておく。
「応答責任」という言葉は、レヴィナスやデリダの名前と結びつけて語られるのがふつうですが、責任という言葉がresponsabiliteの翻訳語であり、その原語にrespons(応答)という言葉が含まれている以上、ヨーロッパ語圏の人々には、哲学的に洗練されていなかったとしても、責任といえば何かしら応答責任のニュアンスをもって理解されていたのだろうと想像されます。レヴイナスやデリダはその曖昧だったかもしれない伝統をラディカルに突きつめた、そう私は理解しています。
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実は、私がresponseから先ず想起するのは行動主義心理学のstimulus→responseという図式であり、この場合は通常応答ではなく反応と訳される。生理的反応を「呼びかけ−応答の関係」の枠組で考えるためには、或る種の反省性=再帰性(reflexibility)が導入される必要があるように思える。例えば、〈感じるを感じる〉といったような。また、この心理学的機制を巡ってはジャン・ピアジェのスキームの同化/異化を巡る議論(例えば『発生的認識論』)が参照されるべきであろうし、さらに根柢的な生物学的機制を巡ってはユクスキュル(『生物から見た世界』*2が参照されるべきではあろう。それから、「さらにいえば人間と無生物や抽象的存在(観念)のあいだにも、呼びかけ−応答関係は成立すると言わなければならないのではないかと思っています」の「抽象的存在(観念)」だが、「抽象的存在(観念)」というのは他者による「呼びかけ」或いは構成の痕跡であり、ただ実際の経緯においてその他者が匿名化されてしまったと見るべきだろう。ヘーゲルの言う客観的精神か。これについては、シュッツのAufbauの第4章「社会的世界の構造分析」第39節「同時代世界の匿名性と理念型の内容充実性」(佐藤嘉一訳、pp.292-302)を参照のこと。
さらにいうと私自身は、生体の反応、暑いとか寒いとか、痛いとか痒いとか、そういう感覚的な反応も呼びかけ−応答の関係で考えられるではないか、とも思っています。感覚的な反応というと、メカニックな感じがして、呼びかけ−応答関係にそぐわないような気もしますが、私たちの身体は外界からのすべての刺激に機械的に反応しているわけではない、当面の生の必要に応じて取捨選択しているわけですから、そこには呼びかけ−応答関係になにがしかは対応する構造があると考えても無理はないと思います。これは突拍子もない意見ではなく、実際、メルロ=ポンティもベルクソンの心身関係論(『物質と記憶』)を批評しながら「世界と討議する身体」というようなことを言っています(『身心の合一』朝日出版社p117)。
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http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080605/1212640212をマークしておく。また、呼格(vocative case)を巡っては、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060412/1144848790やhttp://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071025/1193332927を参照のこと。