- 作者: 上川あや
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/02/20
- メディア: 新書
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上川あや『変えてゆく勇気――「性同一性障害」の私から』(岩波新書、2007)を暫く前に読了した。取り敢えずメモ;
世田谷区議会議員の上川あやさん*1の自伝。
はじめに――いくつものボーダーを越えて
第1章 「私の戸籍は男性です」――政治家になった
第2章 私は誰?――性を見つめて
第3章 性を移行する――居場所を探して
第4章 性別変更に道を拓く――「性同一性障害者特例法」の成立をめぐって
第5章 ちいさな声、声にならない声――当事者のニーズを掘り起こす
第6章 沈黙から発言へ――「変える」方法
第7章 「ふつう」って何だろう――寛容な社会とは
あとがき
もっと詳しく知りたい人のために(監修・針間克己)
第1章は2003年の世田谷区議会選挙。ここでの1つのヤマは、「戸籍上」の「男性」ではなく「女性」としての立候補が認められるところか(pp.16-19)。
第2章と第3章は、著者の〈性自認〉を巡る「自分探し」。幼少時から思春期にかけての自分自身の〈性〉、「自分の身体」に対する違和感。そして、男性との恋愛。「自らの性を読み解くヒントをほとんど与えない学校教育と社会の中で、自分自身を「発見」することがいかに難しいことであるのか」(p.53)。第3章では、「トランスセクシュアル(TS)」、「性同一性障害」という言葉を知り、当事者グループに参加し、実際に「女性」になって生きていく。また、「社会保障制度」が使えないという困難。
第4章は、「性同一性障害者特例法」を巡っての国会でのロビイング活動。この法案の成立に当たっては、南野知惠子(自民党、後に法務大臣*2)という参議院議員の貢献が大きかったことを知る。
第5章は、世田谷区議としての活動。「外国籍住民」への対応、「オストメイト」(人工肛門・人工膀胱使用者)、「ひとり親家庭」、特に「父子家庭」の問題、聴覚障害者に対する「要約筆記」、「失語症会話パートナーの養成」、「点字ブロック」。
第6章は当事者が声を上げるための方法について。「請願」、「陳情」、「直接請求」、「ロビイング」。曰く、「請願権は、未成年や外国人、法人を含めてすべての人に保障されており、一人でも行使できる権利である」(p.183)。「請願が憲法で保障されている権利であるのと違って、陳情はその法的保護を受けない」(p.185)。
ところで、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080805/1217874280に関して、
小学校の頃から、男の子同士でじゃれあっていると、周囲は「ホモ」と言ってからかった。「ホモ」には大抵、「ヘンタイ」とか「気持ち悪い」という形容詞がついていて、いずれにせよ侮蔑的に使われる言葉だった。近所に壁一面に「ホモ牛乳」と書いてある牛乳屋さんがあって、それを見るたび、いたたまれない気持ちになった。自分がその「ホモ」になることは恐怖だった。自分が社会の異端になると考えると心底怖かった。私も社会の偏見に接して育っていたから、その頃は同性同士がつきあうことは「異常」であると思い込んでいた。だから初恋に気づいたとき、自分自身の感情を受け入れることすら難しかった。(pp.41-42)
なお、印度における「ヒジュラ」については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080721/1216572422