一人称か三人称か

朝日新聞』が死刑執行の鳩山邦夫を「死に神」に喩えたことに対する、「あすの会」という「犯罪被害者遺族」団体による「公開質問状」*1http://d.hatena.ne.jp/font-da/20080703/1215098771に引用されていた。そこでは、「確定死刑囚の一日も早い死刑執行を待ち望んできた犯罪被害者遺族は、法務大臣と同様に永世死刑執行人、死に神ということになってしまいます」と言われている。これに対しては、


犯罪被害者遺族とは誰か。「あすの会」に入っていない遺族、死刑を望まない遺族もいる。そうした遺族の存在への配慮が欠けた文章だ。中には、「確定死刑囚の一日も早い死刑執行を待ち望んできた犯罪被害者遺族」もいるだろう。しかし、彼らだけが遺族ではない。遺族は一枚岩ではない。

 私は、犯罪被害者遺族の中に、「死刑を求める人」がいることを批判しない。「死刑執行を待ち望む人」がいることも批判しない。しかし、「あすの会」が犯罪被害者遺族を代表できると思っているのならば、それは批判する。

というコメントが付せられている。この批判は全く正しいだろう。ただ、私としては、ちょっと違ったところが気になった。「あすの会」の言説をもし英訳するとすれば、一人称複数で書かれるのだろうか。それとも三人称複数で書かれるのだろうか。私は一瞬三人称で訳してしまった。つまり、「犯罪被害者遺族を代表できると思っている」という傲慢さ*2といよりも、私は(我々は)「死刑執行を待ち望んできた」と言い切ること、そう言い切ることを引き受けることをせずに、三人称複数的な一般項に逃げている、そういう感じがした。
なお、「死に神」については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080630/1214763317で雑談した。

*1:http://www.navs.jp/2008_6_25.html

*2:因みに、私は傲慢を単純に悪徳であるとは思っていない。寧ろ、それは貴族的な美徳でもありえよう。