小川国夫と前登志夫

毎日新聞』の記事;


訃報:作家の小川国夫さん死去 求道的な姿勢と高貴な作風

 光と影をキーワードに人々の営みを硬質な文体で描いた作家、小川国夫(おがわ・くにお)さんが8日午後1時57分、肺炎のため静岡市の病院で死去した。80歳。自宅は静岡県藤枝市本町1の8の8。葬儀の日程などは未定。

 静岡県藤枝町(現・藤枝市)出身。高校時代にカトリックの洗礼を受け、小説を書き始めた。東大在学中に欧州へ私費留学。その体験を基に帰国後の1957年、短編集「アポロンの島」を自費出版。8年後に故・島尾敏雄に激賞され、注目を集めた。暴力や性衝動、信仰心を、断定的で簡潔な文体とくっきりとした人物造形で描いた「試みの岸」や「或る聖書」は、戦後日本文学の到達点の一つとして高い評価を受けた。

 86年に「逸民」で川端康成文学賞、94年「悲しみの港」で伊藤整文学賞、98年「ハシッシ・ギャング」で読売文学賞を受賞した。

 生涯、故郷の藤枝市で暮らし、その求道的な執筆姿勢と純粋高貴な作風から「純文学の北極星」と呼ばれた。「内向の世代」の作家の一人とも目される。他に「彼の故郷」「アフリカの死」など。紀行文や美術論も人気を集め、大阪芸大教授を務めた。

 ▽作家、黒井千次さんの話 あのきわめて硬質な、魅力的な文体はどこからくるのか。大井川のほとりという土地が作品世界の多くを支え、同時にそこに宗教的な背景もうかがわれそうな気がします。骨の太い強い作品が残されました。

毎日新聞 2008年4月8日 19時38分(最終更新 4月8日 23時15分)
http://mainichi.jp/select/person/news/20080409k0000m040053000c.html

また、

土俗的霊気と生命観、歌人前登志夫さん死去

 土俗的な霊気を詠み込んだ作風で知られた歌人日本芸術院会員の前(まえ)登志夫(としお)(本名・登志晃(としあき))さんが5日、肝硬変で亡くなった。82歳。


 告別式は近親者で行い、後日お別れの会を開く。喪主は長男、浩輔(ひろすけ)氏。

 林業を営む25代目当主として生まれ、モダニズム詩人として出発したのち、1964年に第1歌集「子午線の繭」を発表。以後、故郷の奈良・吉野山に定住し、アニミズム的な生命観のあふれる作品を創作し続けた。

 代表歌に<夜となりて雨降る山かくらやみに脚を伸ばせり川となるまで>。78年歌集「縄文紀」で迢空(ちょうくう)賞、98年歌集「青童子」で読売文学賞
(2008年4月6日20時09分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20080406-OYT1T00389.htm

という記事も目に留まった。10年くらい前に唐突に短歌が読みたくなって、某本屋で買ったのが、「現代歌人文庫」の中の『前登志夫歌集』だったのだ。
前登志夫歌集 (現代歌人文庫 8)

前登志夫歌集 (現代歌人文庫 8)