「崩壊」は先送りしなければならない

D_Amonさん曰く、


北朝鮮制裁決議案に中露が拒否権発動するか否かは、北朝鮮が崩壊したほうがましか存続したほうがましかの問題です。

北朝鮮制裁決議案が採択された場合、中露からの支援が断たれた北朝鮮には暴発(軍事行動)か崩壊か屈服かしか選択肢がありません。

屈服が崩壊を意味する場合は暴発か崩壊しかありませんし、北朝鮮の論理から考えればおそらく北朝鮮は屈服しません。(だから、中国が制裁について「逆効果しかもたらさない」と主張するわけです)

ゆえに実質的な選択肢は暴発か崩壊のみ。そして、暴発は結局は北朝鮮の崩壊を意味しますから、結論としては崩壊しか残りません。

中露は北朝鮮に制裁することで北朝鮮が暴発か崩壊かしか選択しないことを理解していますし、日米もそうでしょう。
http://d.hatena.ne.jp/D_Amon/20060709/p1

もう一つの(碌でもない)可能性はあると思う。増大する脅威を口実にさらに内閉し、圧政が強化されるという可能性が。
北朝鮮の「崩壊」だけれども、それはたんに体制の「崩壊」だけでなく、国家そのもの或いは社会秩序そのものの「崩壊」を意味するだろう。周辺諸国に難民が流出するということだけではすまない。全ての北朝鮮人が自国にいながら〈難民〉になってしまうわけだ。ふつうの国では、政権が崩壊したとしても、〈野党〉が存在することになっているし、そうでなくても国内外で反体制派が活動していたりする。つまり、権力の空白を填める存在は取り敢えずあるわけだ。しかし、管見では北朝鮮にそのような存在は見出せない。同じ民族である韓国人にとっても、いきなり北朝鮮を引き受けるというのは重すぎると感じているのではないか。勿論、日本でも米国でもしゃしゃり出ていって殖民地的に統治するという途はある。しかし、日本にしても米国にしても(相当の鷹派でさえ)、北朝鮮に関して、侵略者としての栄光と悲惨を引き受ける覚悟はないだろう。だから、現実的な選択肢としては、「崩壊」は少しでも先に延ばすしかないということになる。また、「崩壊」に瀕した場合、北朝鮮国内にいる日本からの帰国者や拉致被害者の安全はさらにやばくなることが予想される。そのような状況では、民衆の排外主義的な心性が活性化されることは十分に考えられるし、また拉致被害者の場合、拘束されているとはいえゲストとして特権層に近い生活を送っているわけで、排外主義に加えて、階層的なルサンティマンも盛り上がるであろうからだ。
このような中で、左翼の中には積極的に国連における制裁決議反対運動をしていこうという流れもあるようだが、それに賛成する気にもなれない。そこに見られる「主権国家」のベタな肯定には(それがマジであれば)知的な鈍くささしか感じないし、(マジでなければ)欺瞞的なものを感じてしまう。また、そこには道徳的なディレンマというのが感じられない。その意味では、民主化でも人権でも平和でもアイディアルなものを持たずに差別的な言辞を吐き散らしているウヨな奴らと共通するものがあるといえよう。現実には、道徳的・美学的な嫌悪感を堪えて、より悲惨な事態を避けるためにも、鞭だけでなく飴もちらつかせて、落としどころを探るしかないだろう。
ところで、http://d.hatena.ne.jp/D_Amon/20060706/p1は、(私も含めて)頭を冷やすにはいいテクストだろう。ただ、海に落とせばいいってもんじゃない。実際、露西亜のグリーン・ピースが指摘するように、深刻な海洋汚染の危惧もあるわけだから;

ミサイル燃料で海洋汚染か=環境団体


 【モスクワ10日時事】インタファクス通信によると、国際環境保護団体、グリーンピースのロシア支部は10日、北朝鮮日本海のロシア近海に落下させた弾道ミサイルの液体燃料が海洋環境に深刻な危険をもたらす恐れがあると警告した。
 同支部の専門家は、液体燃料は毒性が極めて強いと指摘した上で、北朝鮮のミサイルが液体燃料を残したまま海中に落下したと述べた。 
時事通信) - 7月10日19時1分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060710-00000105-jij-int