ブック・オフとか

近所のブック・オフへ。しかし、全くの不作で、買ったのは、


 荒木経惟『さっちん』新潮社、1994
 関根政美『多文化主義社会の到来』朝日新聞社、2000
 ガーランド『四次元立方体』アーティストハウス、2000


だけ。
『さっちん』はアラーキーのデビュー作を新たにプリント・編集したもので、1962年に三河島で撮影された。こいつは凄いというかやばい。ちょうど昭和30年代がブームらしいので、ノスタルジアの視線で見るというのもアリかも知れない。しかし、「さっちん」にしても「マー坊」にしても、その他のガキどもにしても、写真のフレームをぶち破らんばかりの凶暴な存在感に比べれば、どうでもいいことだ。全くの素であるにせよ、アラーキーにノセられたにせよ。このガキどもは現在、50代後半か。
もう1軒ある古本屋は閉まっていた。定休日なのか、それとも潰れてしまったのかは知らず。

また、津田沼昭和堂にて、


 見田宗介社会学入門−−人間と社会の未来』岩波新書、2006
 熊野純彦『西洋哲学史 古代から中世へ』岩波新書、2006
 高原基彰『不安型ナショナリズムの時代 日韓中のネット世代が憎みあう本当の理由』洋泉社、2006
 小嶋さちほ『竜宮歳時記 どんとの愛した沖縄』角川文庫、2006


を買う。
『竜宮歳時記』は「小嶋さちほ」という名前につられて買った。小嶋さんがどんととともに沖縄に移住したということは知っていたが、その後の活動などについては知らなかった。どんととの沖縄生活、〈新参者〉の視点から見た沖縄の「歌者」や文化の記述。これは小嶋さんの〈喪の仕事〉でもあったのだ。また、どんと(岐阜県大垣市出身)が浄土真宗の影響を色濃く受けていたことを知る。それもあるのだが、この本は1990年代におけるスピリチュアリティ文化の一つのあり方、1990年代の日本文化における〈沖縄〉というトポスの語られ方の一端を知る上でも、興味深い資料だと思う。ネイティヴの桑江さんなんかはどんな感想をお持ちなのだろうか。ただ、小嶋さんは、戦争や米軍基地といった側面も目を背けずに直視しているということは付け加えておくべきだろう。1980年代にデビューした日本のロック・バンドの中で、ZELDAが占める重要性はいうまでもないだろう。ZELDAのイメージというのは東京ネイティヴの音楽であり、メンバーも埋め立て地への偏愛を語っていたと思う。この本に書かれていなくて、なおかつ知りたかったことというのは、東京湾の埋め立て地から沖縄へという動機である。また、この本ではもう1人、懐かしく、心を少しは揺さぶられる名前を発見。桑名晴子である(正博さんの妹ですね)。どんとに大きな影響を与えたらしい。どんとの文章から;


友部正人はギターとハーモニカがあれば他には何もいらないということを教えてくれた。一人でしっかり立って歌って生きるということを見せてくれた。晴子ちゃんはギターも上手いし唄も上手い最高のシンガーなんだけど、湘南で暮らしていた晴子ちゃんの家のとなりに俺たちが引っ越して、一年間おとなりさんとして仲良く楽しく暮らして、一緒にごはんを食べ、庭で唄い、温泉に行き、一緒にコンサートをやって幸せに過ごしたんだけど、そしたら晴子ちゃんの天才がおれに感染しておれも天才になってしまったのだ。晴子ちゃんと友部正人に会ってなかったら、一人でやることなんて想像もできなかっただろう(p.8)。
また、巻末には小嶋さんと町田康との対談が収録されているけれど、久しぶり町田康の本も読みたくなった。

さて、今何かと話題の三浦展の「下流社会」物。買おうかどうか迷っているけど、あまり気は進まない。