9割と7割

内閣府による「薬物乱用に関する世論調査」を巡って。
記事4つ;


ネット密売が薬物乱用助長 72%、内閣府世論調査

 内閣府は1日、「薬物乱用に関する世論調査」を発表した。青少年による覚せい剤大麻MDMAなど錠剤型麻薬の乱用増加の理由について複数回答で聞いたところ、72・0%が「インターネットや携帯電話を使った密売で入手が容易になった」と考えていることが分かった。
 次が「繁華街などでの密売」の69・0%で、「薬物乱用の恐ろしさの認識不足」が53・5%でこれに続いた。
 薬物乱用に関する認識では、95・7%が「どのような理由でも絶対にいけない」と回答し、「他人に迷惑を掛なければ個人の自由」とする考えは2・2%。ところが、年齢別にみると、15−19歳の8・1%、20代の7・1%が「個人の自由」と答え、他世代に比べ若年層の薬物使用への抵抗感の少なさをうかがわせた。
共同通信) - 4月1日17時8分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060401-00000103-kyodo-pol


青少年の薬物使用「深刻」9割=ネットで入手容易に−内閣府調査

 内閣府が1日発表した「薬物乱用対策に関する世論調査」によると、青少年の薬物問題を深刻と認識している人が91.5%を占めた。1999年11月の前回調査に比べ3.7ポイント減ったものの、薬物使用やそれに絡む犯罪の広がりへの国民の危機感を裏付けた。
 調査は1月6日から22日にかけ、全国15歳以上の男女5000人を対象に実施。有効回答率は52.5%だった。
 青少年の薬物問題への認識を聞いたところ、「深刻」は72.4%、「どちらかといえば深刻」は19.1%だった。これに対し、「深刻ではない」「どちらかといえば深刻ではない」は合わせて0.9%にとどまった。
 青少年に薬物乱用が増加している原因(複数回答)では「インターネットや携帯電話で入手しやすくなった」が72.0%でトップ。以下、「繁華街などで入手しやすくなった」(69.0%)、「薬物乱用の恐ろしさの認識不足」(53.5%)などの順だった。 
時事通信) - 4月1日19時0分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060401-00000062-jij-pol


青少年の薬物乱用 「深刻」9割 内閣府調査

 内閣府が一日発表した「薬物乱用に関する世論調査」によると、青少年の薬物問題を深刻と認識している人が91・5%を占めた。平成十一年十一月の前回調査に比べ3・7ポイント減ったものの、薬物使用やそれに絡む犯罪の広がりへの国民の危機感を裏付けた。
 調査は一月六日から二十二日にかけ、全国の十五歳以上の男女五千人を対象に実施。有効回答率は52・5%だった。
 青少年の薬物問題への認識を聞いたところ、「深刻」は72・4%、「どちらかといえば深刻」は19・1%。これに対し、「深刻ではない」「どちらかといえば深刻ではない」は合わせて0・9%にとどまった。
 青少年に薬物乱用が増加している原因(複数回答)では「インターネットや携帯電話で入手しやすくなった」が72・0%でトップ。以下、「繁華街などで入手しやすくなった」(69・0%)、「薬物乱用の恐ろしさの認識不足」(53・5%)などの順だった。
産経新聞) - 4月2日2時55分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060402-00000003-san-pol


薬物乱用の原因、「ネットや携帯」7割 内閣府世論調査
2006年04月02日07時24分

 薬物乱用に関する内閣府世論調査で、青少年の乱用増加の原因としてインターネットや携帯電話による密売を挙げた人が7割を占めた。「ネットによる全体の密売量は分からない」(警察庁)中で、ネット社会をめぐる不安が浮き彫りになった格好だ。

 調査は内閣府が1月、15歳以上の男女5000人を対象に面接方式で実施し、回答率は52.5%。75年から数年おきに調査してきたが、今回初めて乱用増加の原因(複数回答)について「インターネットや携帯電話による密売」の選択肢を加えたところ、72%と最多だった。対策面でも、ネットや携帯電話による密売の取り締まり強化を求める回答が59%にのぼり、学校教育(63%)、密売人取り締まり(60%)に次いで多かった。
http://www.asahi.com/national/update/0402/TKY200604020036.html

取り敢えず4つ挙げてみたのだけれど、くっきりと9割派と7割派に分かれている。9割、つまり「青少年の薬物問題を深刻と認識している人」の割合に注目しているのが『産経』と時事、7割、つまり「青少年の乱用増加の原因としてインターネットや携帯電話による密売を挙げた人」の割合に注目しているのが『朝日』と共同ということになる。
先ず注意しなければいけないのは、これはあくまでも意見、すなわち主観的思い込みの集積を調査したものであって、「薬物問題」の客観的な「深刻」さとは直接の関係がないということである。例えばタイトルだけを見た場合、このことが無視される可能性はかなりあるのではないかと思う。
実は「深刻」だと認識している人は前回の調査よりも減っている。もしかして、7割に注目した報道はこの減っているという事実に反応したのかも知れない。9割に注目した報道でも、この事実はあまり重要ではないかのようにあっさりと流されてしまっているわけだが。また、「原因」については、調査者側が用意した「選択肢」からのチョイスであることは注意されてしかるべきだろう。
実際に、この調査はどのように使われるのだろうか。とても興味がある。上に引用したように、既に不安を煽るために使用されてしまったわけだが。ネットに対する規制が云々されるときに、その主張をもっともらしく飾るためのリソースとして使われるのだろうか。
社会調査(アンケート)は勿論社会を研究するための手段としても使われるわけだが、社会調査という実践それ自体が社会的相互行為であり、社会学の対象となる。一般常識やら学説やらを引き合いに出しての議論を通じた調査票のメーキング、インタヴュアへのインストラクション、インタヴュー(質問し−答える)というのはすぐに思いつくところだが、さらに重要なのは、調査データが説得や論破のためのリソースとして、市場調査の場合だと企画会議や役員会で、このような役所による調査だと議会などで、どのように使用されるのかということだろう。
なお、社会調査には、私たちに(直観不可能な)マクロな社会を想像させる手段という側面もあろう。私たちはこういう調査についての報道を読むとき、自らを数字で示された多数派や少数派に同一化することを通じて、例えば国民社会を想像すると同時にそれを再生産している。これって、暴論?