TMI以前

脱原子力社会へ――電力をグリーン化する (岩波新書)

脱原子力社会へ――電力をグリーン化する (岩波新書)

http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120409/1333936632に関係があるかも知れない。
長谷川公一『脱原子力社会へ』によると、米国における産業としての原発の衰退はTMI事故以前から既に始まっていた。つまり、「アメリカでは原発の新規発注は、スリーマイル島事故前年の一九七八年を最後に途絶え、しかも一九七四年以降発注された原子炉は、一基も完成していない」(p.76)。
少しメモ。


(前略)(1)アメリカの場合、二ケタ台の発注が続いた原子炉発注ブームは一九六六年から七四年の九年間にすぎなかった。(2)七五年以降、新規発注は急減していた。(3)七八年を最後に新規発注は三二年以上途絶えている。(4)七四年以降発注された原子炉で完成したものは一基もない。(5)キャンセルないし工事が中止した原子炉は全部で一二五基にのぼり、完成し運転を開始した原子炉の数一二三基を上回る。発注された原子炉建設計画の半数以上は建設途中で破棄された。(6)七〇年までに発注された炉一〇八基のうち途中で破棄されたものは一四基にとどまり、八七%は完成し運転を開始した。(7)七一〜七三年に発注された一〇〇基のうち操業できたのは二九基で、三割にみたない。(8)途中で破棄された炉のうち四割以上はスリーマイル島事故以前にキャンセルされていた。(p.77)
つまり、

七九年のスリーマイル島事故をきっかけにアメリカでは原子力離れが始まったという趣旨の記述をしている文献が多いが、それは正確ではない。アメリカの場合、原発離れは七〇年代半ばにはすでに始まっていたのである。七九年のスリーマイル島事故はそれを決定的に加速したというのが正確な理解である。経済的リスクの大きさという問題はそれ以前に顕在化していたからである。日本で流布している理解には、スリーマイル島事故の特殊性を強調し、経済的リスクの大きさというもう一つの問題から目を逸らさせる効果がある。(pp.77-79)
ということになる。
さて角川書店のPR雑誌『本の旅人』に花村萬月の『希望(仮)』という小説が連載されていたのだが、その最終回(No.198)に、

琉球大学に合格してほっとしたところに、味舌が黙って新聞を突きだした。三月二十八日にアメリカのスリーマイル島原子力発電所で、炉心融解、つまりメルトダウンが起きてしまったという。記事を読み進めるうちに、僕の下膊にちいさな鳥肌が立っていた。生まれてはじめて肌が粟立つという経験をした。味舌が溜息をついた。
「これ、とんでもない事故やで」
「けど、なんか識者の反応とか、対岸の火事みたいですね」
地震だらけの狭い島国に呆れるほどの原子力発電所抱えとるくせにな、まったく他人事や。実際に原子炉建屋ん中覗いたら、もうすこし泡食いよるやろうけどなあ」
「いつだったか、有働さんが言ってましたよね。――いずれ事故が起きるやろうな。それも大事故や。反原発の奴らが原発の数その他から割り出した単純な確率論や。人為的なミスや地震とかの天災の確立も加えてある。ええか。まずアメリカで大事故が起きる。次はソ連や。その次には日本かフランス」
「よう、覚えとるな。まったく会長の予言どおりいうか、単純な確率だけに、空恐ろしいわ」
「次はソ連で、その次は日本かフランスって断言してましたね」
「そうならんことを祈るしかないな」
(後略)(p.82)
2012年に書かれていることを考えると、ちょっと未来に生きる人間の認識論的特権の濫用なんじゃないかという気もする。

徐氏と宋氏

姜麗鈞「滬高調紀念徐光啓遡海派源頭」『東方早報』2012年4月24日


今年は徐光啓*1生誕450周年。23日には私の近所の「光啓公園」で記念式典が挙行されたという。
25日の『東方早報』に載った李天綱*2徐光啓:”四百年来最杰出上海人」から徐光啓と宋一族の関係に関する部分をメモ;


徐光啓有五個孫子:爾覚、爾爵、爾斗、爾黙、爾路、全体入教、子孫繁衍、姻親遍布、使得上海城廟和徐家匯成為天主教重鎮、松江、嘉定、青浦、川沙也逐漸発展出天主教社群。徐光啓有一位孫女徐甘第嫁到松江府城内、一心伝教、1658年捐建邱家湾教堂、還出巨資幇助西洋伝教士。死後不久、羅馬教廷曽経有計劃把她封為聖人。清代末年、有一位徐氏後人嫁給了青浦倪氏。倪氏有女、嫁給了従美国回到上海、為衛理公会*3伝教的宋耀如牧師。宋耀如夫婦和子女們、還有他的女婿們、構成了民国時期上海乃至中国的第一大家族、他們是:女:宋藹齢(適孔祥煕)、慶齢(適孫文)、美齢(適蒋介石);子:宋子文、宋子良。

「動物虐待」から「大量殺人」へ?

The Frankenstein Syndrome: Ethical and Social Issues in the Genetic Engineering of Animals (Cambridge Studies in Philosophy and Public Policy)

The Frankenstein Syndrome: Ethical and Social Issues in the Genetic Engineering of Animals (Cambridge Studies in Philosophy and Public Policy)

昨日*1に続いて、Bernard E. RollinのThe Frankenstein Syndromeから。


(…) It has been believed since antiquity, incorporated into Catholic dogma by Thomas Aquinas in the Middle Age, and reaffirmed by contemporary psychology and psychiatry, that people who begin by abusing animals will often graduate to abusing people. Among the most notorious mass murderers we have seen in the last decade or so, almost all have had histories of animal abuse. (p.140)
トマス・アクィナスが「動物虐待」に言及しているのは知らなかった。それから、1980年代以降における「大量殺人者」の「殆ど全員」が「動物虐待」を経験しているというのはそのような研究があるのだろうか。この本の刊行は1995年だが、Rollin氏は「Randoll Lockwood博士、私信」としている(p.222)。

東郷健

東郷健*1が4月1日に死去していたという。
スポニチ』の記事;


東郷健氏が死去 元「雑民党」代表、雑誌編集者


 元「雑民党」代表で雑誌編集者の東郷健(とうごう・けん、本名健=たけし)氏が1日午後10時57分、前立腺がんのため東京都中野区の自宅で死去したことが25日、分かった。79歳。兵庫県出身。葬儀・告別式は親族で済ませた。喪主は長男優(ゆう)氏。

 関西学院大卒。同性愛者や障害者らへの差別撤廃を訴える活動を展開。雑誌「ザ・ゲイ」編集長を務めた。衆・参院選挙や東京都知事選に立候補、いずれも落選したが、政見放送での過激な発言などで知られた。

 1983年の参院選で、NHKが政見放送の一部を差別用語としてカットしたのは違法として提訴したが敗訴。個人観賞用にわいせつ物を海外から持ち込んだ「税関ポルノ訴訟」でも有罪判決を受けた。

[ 2012年4月26日 06:00 ]
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/04/26/kiji/K20120426003125170.html

私としては、〈昭和〉が死んでゆくという感じだな。
今度は生きている人。東郷健よりも10歳下。

小沢一郎裁判の判決は予想通り無罪。

だが、「小沢信者」たちは内心この判決にがっかりしているのではないか。

彼らが信じる「陰謀理論」によれば、救世主は常に迫害されるはずだからだ。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20120426/1335412623

そうなんだ、と軽く受け流して、やはり『スポニチ』の記事;

強気の小沢チルドレン 目に涙「正義あった」 寺に無罪祈願も

 「小沢チルドレン」の一人、三宅雪子衆院議員は議員会館で同僚議員から小沢一郎元代表の「無罪」を耳打ちされると、同僚と固く握手した。

 「無罪を疑っていなかったけれど、正直ほっとした」と胸をなで下ろした。うっすらと涙を浮かべ「司法に正義は残っていた」とも。上気した顔で元代表党員資格停止処分解除を訴えた。

 早朝、お寺に無罪祈願に行った徳永エリ参院議員は判決を知った瞬間、胸が熱くなったという。「リーダーとして民主党を引っ張っていってほしい」と興奮した様子。森裕子参院議員は「起訴の議決自体が無効で無罪は当然。審査会をチェックする仕組みが必要だ」と強気の言葉を繰り返した。自身のブログには「陸山会事件そのものが虚構である。(中略)新しい闘いが始まる」と書き込んだ。

 「無罪と言うより、冤罪だ」と強調したのは小沢元代表に近い川内博史衆院議員。「でっち上げの国策捜査だった」と検察を批判した。

[ 2012年4月26日 12:26 ]
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/04/26/kiji/K20120426003126540.html

どこのお寺なのだろうか。参拝が増えるかも知れない。