空港は児童ポルノだ?

Alan Travis “New scanners break child porn laws” http://www.guardian.co.uk/politics/2010/jan/04/new-scanners-child-porn-laws


周知のように、世界のどこでも空港のセキュリティ・チェックは日増しに厳しくなっている。英国の空港では従来の金属探知機に加えて、ボディ・スキャナーを導入するところが増えている。これに対して、思わぬ方面から異議が申し立てられている。


The rapid introduction of full body scanners at British airports threatens to breach child protection laws which ban the creation of indecent images of children, the Guardian has learned.

Privacy campaigners claim the images created by the machines are so graphic they amount to "virtual strip-searching" and have called for safeguards to protect the privacy of passengers involved.

Ministers now face having to exempt under 18s from the scans or face the delays of introducing new legislation to ensure airport security staff do not commit offences under child pornography laws.

ボディ・スキャナーを使うと、人間のリアルなヌード・イメージが得られるため、18歳未満の人間に対して使用した場合、「児童の猥褻な画像の製造」を禁ずる児童保護法に抵触する可能性がある。そのため、政府は18歳未満の人間に対してボディ・スキャナーによるセキュリティ・チェックを免除するか、セキュリティ・チェックの係官を児童ポルノ禁止法から免責するかの選択を迫られている。
随分昔に、「見えすぎちゃって困るの」というTVアンテナのCMがあったのだ。

児童ポルノ」問題については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071018/1192728137 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071101/1193896416 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080315/1205588068 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080421/1208714162 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080805/1217870245 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080930/1222710736 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090629/1246244161 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090717/1247839211 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090804/1249361814 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090918/1253277638 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091128/1259424766 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091221/1261419322も。

おまけ。
四国新聞』の記事。ポルシェではない。


ロマンポルノが“復活”/22年ぶり、2作品を公開

2010/01/04 20:56


 1970年代から80年代にかけて人気を博し、一時代を築いた成人映画「にっかつロマンポルノ」が、「ロマンポルノ・RETURNS」として22年ぶりに“復活”することが4日、分かった。

 往年の作品をリメークした「団地妻 昼下がりの情事」(中原俊監督)と「後ろから前から」(増本庄一郎監督)が東京で2月に公開される。

 配給の日活は「女性も楽しめることを重視して製作した。想像力をかき立てるエロスを通して、日本映画界に新たな旋風を巻き起こしていく」としており、シリーズ化も検討している。

 にっかつロマンポルノは71年から88年まで約1100本が製作された。若手の監督たちが作家性を発揮、滝田洋二郎さん、金子修介さんら多くの名だたる監督を生んだが、アダルトビデオの普及で衰退した。
http://www.shikoku-np.co.jp/national/culture_entertainment/article.aspx?id=20100104000308

武者小路実篤/周作人

『朝日』の記事;


武者小路実篤、戦争支持派とは一線 魯迅弟へ手紙で本音

2010年1月4日3時2分


小説「友情」などで知られる作家の武者小路実篤(むしゃのこうじ・さねあつ)(1885〜1976)が、中国人作家の魯迅(ろじん)の弟にあてた手紙の実物がみつかった。44年ごろのもので、第2次世界大戦中は戦争に協力的だったとされる実篤が、戦争末期には国策追従の文学者から一定の距離を持っていた様子が読み取れる。

 手紙は、魯迅の弟で文学者の周作人(1885〜1967)にあてたもの。周と、戦争支持派の作家片岡鉄兵との論争を仲裁する目的で書かれた。論争のきっかけは、43年8月に開かれた国策に協力する文学者の会議。知日派とされる周は参加せず、そんな周を片岡は国策に非協力的だと非難していた。

 手紙はペン書きで、原稿用紙5枚にしたためられている。封筒には筆で「周作人兄 武者小路実篤」と記されている。実篤は開戦時、戦争を賛美する文章を発表するなど、戦争に協力する姿勢を示していた。だが「皆も今更に君の存在の大きさを知った」と周に敬意を払い、国策協力一辺倒の片岡の発言には、「根拠のない発言」「場あたり的なものだ」と否定的。会議を開いた日本文学報国会についても「皆が同じ意見を持たなければならないのでしたら、僕はとっくに退会しています」と書き、戦争協力を強いられた時代に、周に共感して本音を漏らしている。最後に「君の三十余年の友情を感謝して」と添えている。

 手紙は香港在住の作家鮑耀明(パオ・ヤオミン)さん(89)が周から61年に譲り受け、最近まで行方が分からなかったが、自宅で見つかった。70年代前半に鮑さんから写しをもらっていた中国文学者の木山英雄・一橋大名誉教授は78年に著作で紹介、04年の改訂版「周作人『対日協力』の顛末」にも掲載された。ただ周の視点からの分析が主だったため、実篤の戦争に対する姿勢までは詳しく言及されていない。87年から刊行された「武者小路実篤全集」(小学館)にも収録されておらず、広く知られないままになっていた。

 この全集の編集に加わった大津山国夫・千葉大名誉教授は「大戦末期になるにつれ、冷静に戦争を見つめていた様子がうかがえる。実篤の研究者の間でも知られていなかった貴重な資料。これからの分析が待たれる」と話している。(高津祐典、都築和人)
http://www.asahi.com/culture/update/0104/TKY201001030235.html

タイトルの「魯迅弟」というのは周作人に対して少々失礼なのでは? 日本には兄の魯迅よりも深く関わっているともいえるのだから。周作人の日本文化に対する見識については、冨山房から出た『周作人随筆』をマークしておく。
周作人随筆 (冨山房百科文庫)

周作人随筆 (冨山房百科文庫)

周作人に関しては、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080306/1204779649 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090218/1234940110も参照のこと。

他者理解と自己理解(ディルタイ)

承前*1

共同存在の現象学 (岩波文庫)

共同存在の現象学 (岩波文庫)

カール・レーヴィット『共同存在の現象学』II「共同相互存在の構造分析」第一部「共同世界と「世界」ならびに「周囲世界」との関係」第4節「「世界」と「生」が共同世界を意味するという指示はディルタイが確証している」の続き。
「私の自己了解と他者の了解が相互に依存している」ということ(p.80);


私は、じぶん自身が体験可能なあり方から他者を理解する(二五九頁*2)。〔一方では〕「理解とは〈きみ〉のうちに〈私〉を再発見することである」(一九一頁)――他方で私は、他者を理解することにおいて、私に固有な生の可能性とその了解を同時に展開する。この両者はともに、ある共通性あるいは共属性を、つまり共通の教養、共感、義務等々を前提とすることによってのみ可能なのである(一四一頁)。ことばの意義をたんに知っていることさえ、すでにそうした共通性を、すなわち言語共同体を前提し(二〇九頁)、他面では互いに共に在ること(mit ein ander Sein)から共通性がかたちづくられる。このように互いに(gegenseitich)理解しあって共に生きること(zusammen Leben)によってはじめて、そのつど固有な生の経験に、現実的な「生の経験」という性格が与えられることになるだろう(一三二頁)。(pp.80-81)
「客観的精神」を巡って;

ディルタイは、諸個人に現実的あるいは可能的に共通するものが、歴史的に客観化したありかたを「客観的精神」と呼ぶ(二〇八頁)。客観的精神の領域は、生活様式、交通の諸形態から哲学へとおよぶ。客観的精神は、幼年期から人間を本質的に規定しているのである。客観的精神とは、他の人格とその生の外化との了解がそのうちで遂行される媒体である。(略)他方で私は、世界を理解するしかたを共同相互存在にもとづいて習得するばかりではない。或るものについて自身が獲得した了解をも、他者がそれをどのように理解するかという、そのしかたと様式によって確認するのである。(略)じぶんに固有の生と体験が、他の人格を了解することで拡張され訂正され、他方ではまた、他の人格が固有の体験を介して理解される(一四五頁)。(後略)(pp.81-82)
「自己反省(Selbstbesinnung)の哲学」としてのディルタイ哲学;

(前略)自己反省のもとにディルタイが理解するのは、自己へと個別化された現存在が、じぶん−自身−顕わに−なろうと−欲すること(Sich-selbst-offenbar-wollen)ではまったくなく――自己反省を利己的に追究したところに、ディルタイニーチェの大きなあやまりを見ている(二五〇頁および二七九頁、また、第四巻、五二八頁以下)――歴史的な自己反省である。とはいえディルタイは、歴史的人間の自己反省に対して「個別的人間」のそれを対置する。そこからあきらかになるのは、歴史的存在というディルタイの概念が、共同相互存在の概念と根源的な連関のうちに置かれていることである。(略)人間は「もはや探究不能な自己の深部にいたるまで」(二七八頁)歴史的な存在である。このしだいがディルタイにとって意味しているのは、個別者という有限的な実存が時間的に規定されていることではない。それぞれの個人が同−時代的に規定されているということである。ディルタイは、ニーチェはその自己反省のしかたによって、人間が歴史的な存在であることを見あやまったという。(pp.82-83)
さらに、ゲーテの『タッソ』からの引用(p.83)

ここで、備忘のために、ディルタイに関して、2つのテクストを提示しておく。
丸山高司「表現的存在――歴史的生の存在論――」(in 新田義弘ほか編『思想としての20世紀』[岩波講座 現代思想1]、pp.139-185、1993)

岩波講座 現代思想〈1〉思想としての20世紀

岩波講座 現代思想〈1〉思想としての20世紀

大石学「〈生の哲学〉の自己意識論――ヨルクとディルタイにみられるその基本構想――」(in 新田義弘、河本英夫編『自己意識の現象学*3世界思想社、pp.92-106、2005)
自己意識の現象学―生命と知をめぐって (SEKAISHISO SEMINAR)

自己意識の現象学―生命と知をめぐって (SEKAISHISO SEMINAR)

『微「塩」大義』

買った本。

舒瑜『微「塩」大義 雲南諾蠟塩業的歴史人類学考察』世界図書出版公司、2010


前言
第一章 導論
第二章 穿行諾蠟
第三章 塩井的観念世界與“帝国的隠喩”
第四章 塩業時代
第五章 私塩的流動與交換圏:清末到民国
第六章 従塩井到農村:国族與物
第七章 結論:物的“社会”生命?


参考文献
附録
出版後記 

雲南省諾蠟における製塩の歴史人類学的考察。この本は私的な意味で興味深い。諾蠟は妻の田舎からさらに数キロ山奥に入った村。また、妻の先祖は代々塩商人だった。
See also
http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070412/1176389537
http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070415/1176662583

「ふだん着」など

本に読まれて (中公文庫)

本に読まれて (中公文庫)

http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100104/1262578368で、須賀敦子さんの「世界をよこにつなげる思想」から引用したのだが、これは主にシモーヌ・ヴェイユについて語った文章。曰く、


あっさりしたつきあいとはいっても、ヴェイユは、五〇年代の初頭に大学院で勉強していた私たち何人かの女子学生の仲間にとって、エディット・シュタインとならんで、灯台のような存在だった。シュタインは、ドイツ生まれのユダヤ人で、フッサールの弟子として研究生活をつづけたのち、カルメル会の修道女になったが、一九四二年の夏、アウシュヴィッツで惨殺された人である。女性であること、知識人であること、しかも、信仰の問題に深くかかわり、結婚よりも自立をえらんだことが、世間しらずでむこうみずな私たちにとっては、きらきらと輝く生き方に見えた。(戦時中の体験で、こりごりのはずの)工場で働くということまで、やや真剣に考えて話しあったりした。(p.102)
また、須賀さんは「シュタインにせよ、ヴェイユにせよ、高度の教養を、まるでふだん着のように身につけていた人たちを、私はまったく叙情的に解釈し、勉強のほうは怠けていた」とも書いている(p.103)。
また、「読書日記 『フェリー二を読む』『天皇の逝く国で』『詩は友人を数える方法』」の、フェリー二の『道』に触れての、

あたまでばかり考えて考えて、精神がささくれだったようになっていたパリで、『道』は《存在の重さ》というようなことを考えさせてくれた。明晰であろうとするとき、自分も人も傷つけてしまうことが多いのだが、《存在》そのものは、ひたすら人をなぐさめる。自分は《存在する》といえる人間になりたい。フェリーニから、そんなメッセージが来たように思った。(p.214)
というパッセージも目に止まる。
道 [DVD]

道 [DVD]

「世界のグーグル化とメディア文化財の公共的保全・活用」(Info)

「日本社会学理論学会」経由で。


日本学術会議主催シンポジウム
◆「世界のグーグル化とメディア文化財の公共的保全・活用」◆
          の開催について(概要)

●日時:平成22年1月30日(土)13:00〜17:30(12:30受付開始)

●場所:日本学術会議講堂(港区六本木7?22?34 東京メトロ千代田線「乃木坂駅」5番出口徒歩1分)

●趣旨 
グーグル等のグローバル企業によってあらゆる形態のコンテンツが市場システムに組み込まれていくなかで、学術書籍やドキュメンタリー等の映像作品、写真、ドラマ脚本等の必ず しも商業的利益にはつながらないメディア文化財の保存と活用に関する公的枠組みはいかにあるべきか。メディア文化財著作権や所有権をめぐる問題から新しい知のプラットフォームまで、大学と図書館、博物館などの役割とその連携の仕組みについて議論したい。

●プログラム(予定)
12:30 受付開始
13:00〜13:10 主旨説明
13:10〜13:40 基調講演 長尾真(連携会員、国立国会図書館館長)

13:40〜15:00 世界のグーグル化と出版文化の公共性
報告1 龍澤武(東アジア出版人会議理事、元平凡社編集局長)
報告2 名和小太郎情報セキュリティ大学院大学特別研究員)
ディスカッサント 上野千鶴子(第一部会員、東京大学大学院教授)

15:00〜15:20 休憩

15:20〜17:00 映像アーカイブとメディア文化財の活用
報告1 岡島尚志(国立近代美術館フィルムセンター主幹、国際フィルムアーカイブ連盟会長)
報告2 大路幹生(NHKライツ・アーカイブスセンター長)
報告3 テッサ・M・スズキ(オーストラリア国立大学教授)
ディスカッサント 伊藤守(連携会員、早稲田大学教授)

17:00〜17:30 総括討論

モデレーター:吉見俊哉(連携会員、東京大学大学院教授)、遠藤薫(連携会員、学習院大学教授)

参加費:無料
定員:300名

問合せ先:
日本学術会議事務局企画課公開講演会担当
(〒106-8555東京都港区六本木7-22-34)
(以下、電話番号とメイル・アドレスは省略)

Tori Amos speaks

Nosheen Iqbal “Portrait of the artist: Tori Amos, musician” http://www.guardian.co.uk/music/2010/jan/04/tori-amos-musician


最近Midwinter Gracesを出したTori Amos*1へのインタヴュー。例えば、如何にしてロックの道に足を踏み入れたか;


My older brother Michael was into rock music, which my father hated. He was a minister, so it was banned in our house. But Michael would sneak the records in, and I'd play the Stones and Little Richard on the piano with him before dad came home. That, for me, was the beginning.
また、”Which female artists inspire you?”という質問には答えを濁している;

I can't name names: I'd be too worried about missing someone out. I remember reading an interview with one of my idols about 15 years ago, and she was asked something similar. She named all these other female artists – everyone around at the time who you could have mentioned – but not me. I was devastated.
Midwinter Graces

Midwinter Graces


Vanessa Thorpe “Elton John tells how he helped Eminem quit drugs” http://www.guardian.co.uk/global/2010/jan/03/eminem-elton-john-drugs


エルトン・ジョン、如何にしてエミネムをドラッグ(特にメタドン)中毒から助けたかを語る。ドラッグ問題はエミネムRelapseの主なテーマでもあった。
See also


Anthony Bozza “Being Eminemhttp://www.guardian.co.uk/music/2009/may/17/eminem-urban-music-relapse
Sean Michaels “Eminem: Elton John got me off drugs” http://www.guardian.co.uk/music/2009/may/15/eminem-elton-john

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