モルモンと太平天国

菊池秀明『太平天国*1を読んでいて、思ったこと。太平天国が南京を占領すると、欧米各国(基督教国)の外交官や聖職者は太平天国と直接接触・交渉し始めている(p.156ff.)。彼らは、太平天国の「キリスト教」というのはかなりおかしいぞ、という結論に達している。問題のひとつは「聖書」を超えた権威。太平天国は、自分たちが依拠しているのは、「旧約」や「新約」を超えた「真約」、すなわち神と洪秀全とのコミュニケーションであると主張していた(pp.170-171)。また、太平天国の諸王の「多妻制」は太平天国を「異端」認定するための「重要な論拠」となった(p.169)。ここで疑問に思ったのは、英国人や仏蘭西人はともかくとして、米国人の場合、こいつら米国のモルモンに似ているところもあるよねと思ったりしなかったのかということ。 モルモン教末日聖徒イエス・キリスト教会*2の開教は1830年である。まあ、北米大陸と中国大陸と隔たってはいるが、どちらも近代以降にヨーロッパではない場所で創唱された「キリスト教」の先駆けなのだった。