「核兵器禁止条約」と「パリ不戦条約」

小山美砂「痛ましさの共有が必須」『毎日新聞』2021年1月25日


核兵器禁止条約」*1について、『この世界の片隅に』の片渕須直*2が語る;


日米を含む63カ国が締結したパリ不戦条約の背景に850万人以上が犠牲になった14~18年の第一次世界大戦があります。致死性の高い毒ガスが使われ、後障害に苦しむ被害者が出ました。この反省からパリ不戦条約は自衛戦争を除く武力行使を禁じましたが、各国の足並みがそろわず、第二次大戦に向かいます。
私見ですが、この条約が失敗したのは、毒ガス被害の「痛ましさ」を世界が共有できなかったからではないでしょうか。何をすればどんな被害を与え、自分が被るとどんな痛みを伴うのか。そんな理解を共有できなかったことが、45年の原爆投下につながったのではないかと思うのです。
核兵器禁止条約の批准国・地域が52にとどまっているのは、多くの国々が痛ましさを共有できていない証左です。原爆で体を焼かれ、大切な人を奪われ、放射線による後遺症に苦しむ被爆者の痛みを伝え続ける必要があります。痛ましさを世界中の人々と共有できれば、条約は有効なものになっていくのではないでしょうか。
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