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朽木誠一郎*1「「音楽関係者は注意を」と専門家 「半音下がって聞こえる」咳止め薬の副作用」https://www.buzzfeed.com/jp/seiichirokuchiki/flaveric-side-effect


2017年の記事。
ファイザー製薬の咳止め薬「フラベリック」に、半音下がって聴こえるという副作用があること。但し、医者から注意を喚起されることは殆どない。


結論から言うと、この副作用はファイザーも認めるものだ。フラベリックの添付文書には稀な副作用として“聴覚異常(音感の変化等)”とある。

この副作用が追加されたのは2006年7月。その際の文書では、国内で「音が半音低く聞こえる」などの報告が集まり、自主改訂に至ったと説明されている。

研究機関の調査で判明したものではなく、患者から報告されたもので、どのくらいの頻度で発生するのかは不明。

ファイザーの広報担当者は取材に対し、この副作用の存在を認めた上で「個々の薬の副作用については答える立場にない」として、詳細な回答はしなかった。

一方、全国の医療機関で構成される医療団体の全日本民医連が実施する「副作用モニター」には、フラベリックについて同様の報告がなされている*2

同団体は約40年前から医薬品の副作用モニターや新薬評価をおこない、情報を集積・発信している。

同団体の薬剤委員会副委員長で管理薬剤師の東久保隆氏によれば、全日本民医連には、2011〜2016年に12例の報告があったという。

東久保氏の推計では、国内の年間のフラベリック使用者数はおよそ40万人。使用者に対しての報告数から考えると「頻度はかなり低いと考えられる」。


同団体への報告では、フラベリックによる聴覚異常の副作用があったのは、ほとんど女性で、若い世代〜壮年期までの年齢構成だった。

服薬してから同日から翌日に音階が低く聞こえだし、服薬している間は持続。服薬の中止により、数日から最長2週間で回復したという。

この性別的・年齢的な偏りの意味は? また、そもそもどのような化学的或いは生理学的な機制によって「半音下がって聞こえる」ようになるのか。薬は耳に作用しているのか、それとも脳に作用しているのか。
最初、半音下がったら、不協和音化が起こって、コードもメロディも崩れちゃうんじゃないかと思ったのだけど、よく考えたら、一律に半音下がるので、コードもメロディもゲシュタルトとしてはそのまま保持されるのだった。だから、微妙に低くない? という感じなのだろうか。つまり、この「副作用」が副作用として深刻に機能するのは絶対音感の人に対して、ということ? 双極性障害の治療に使われるValproateという薬には「脳の可塑性」を高め、大人でも絶対音感を習得することを可能にするという効果があるという*3。咳止め薬の副作用と関係があるのかどうかわからないけれど。