何故洞窟の中に?

Paul Baker “Largest Discovery of Witch Marks in Britain at Creswell Crags” https://www.creswell-crags.org.uk/2019/02/15/largest-discovery-of-witch-marks-in-britain-at-creswell-crags/
くらのすけ「悪魔に対抗する「保護呪文」の痕跡を洞窟内から大量に発見(イギリス)」https://nazology.net/archives/47463#RhBKc8w.twitter_overlay
Mark Brown “The gateway to hell? Hundreds of anti-witch marks found in Midlands cave” https://www.theguardian.com/culture/2019/feb/15/nottinghamshire-cave-carvings-marks-scare-witches
“Creswell Crags: 'Witches' marks' found in cave network” https://www.bbc.com/news/uk-england-nottinghamshire-47242603


今年初め、イングランドのダービーシャーとノッティンガムシャーの境にある「クレスウェル・クラッグズ」*1の洞窟で、大量の「魔除けの印(apotropaic marks)」が発見された。この洞窟は氷河期の壁画で知られている*2。発見された「印」は16世紀から19世紀前半までのもの。この洞窟が遺跡として考古学的調査の対象となるのは19世紀後半からなので、その直前まで、魔除けは行われていたことになる。「魔除けの印」の遺跡としてはブリテン島最大。
この 「魔除けの印(apotropaic marks)」は中世から近世にかけて、建物のドアや窓によく書かれていた。魔除けというのはそもそもそういうものなのだろうけど、ドアや窓というのは閾というか内/外の境界であり、外からやってくる〈魔〉から内部を護るためのものである。洞窟は一方では一般の生活空間の外部であるとともに、形状的には包み込まれた内部である。何れにしても、魔除けが要請される境界ではない。洞窟の中で、魔除けを必要とするような外部を意識した何らかの作業が行われていたということになるけど、それは何だったのか。