Other Cove

Kaori Shoji “Documentarian Megumi Sasaki hopes to bring balance to the story of Taiji in ‘A Whale of a Tale’” https://www.japantimes.co.jp/culture/2017/09/06/films/documentarian-megumi-sasaki-hopes-bring-balance-story-taiji-whale-tale/


米国映画『ザ・コーヴ*1へのひとつの回答といえるドキュメンタリー映画『おクジラさま ふたつの正義の物語』*2を監督した佐々木芽生さん*3へのインタヴュー記事;


“Quite simply, I was fascinated by the controversy,” Sasaki tells The Japan Times, “but I was also pained by what I felt was a very one-sided way of viewing things.

“‘The Cove’ showed us what the Taiji fishermen were doing to dolphins in a way that made any counter-arguments difficult if not impossible. As a filmmaker based in the United States, I knew that using hidden cameras and bypassing authority is a very effective way to make a documentary, but I wouldn’t call that journalism. And there were a lot of misleading passages and untruthful depictions in that film.

“And as a Japanese I could understand how the people of Taiji felt betrayed and outraged. Their response was to try and cover things up, or put up a wall of silence and hope the foreigners would go away. Well, the foreigners were never going away. Unless the Taiji locals spoke up about their side of the story, things were going to get worse.”


“I told them that this is their chance to tell their story, and they listened to me because I was a Japanese woman who posed no threats,” she says. “I made sure they understood what I was trying to do and how I was going to film things ― nothing sneaky or secretive, because I had already worked hard to gain their trust.”

Sasaki says that one of her aims with the film was to convey how killing and eating dolphins and whales doesn’t carry the same cultural weight in Japan as it does elsewhere, though there is a lot of respect for the animals.

“Every year the fishermen pray and give thanks to the dolphins,” she says. “To them, the more criminal thing would be to kill an animal for food and not even thank them for it.”

ザ・コーヴ [DVD]

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また、

金子遊「映画『おクジラさま』はなぜ世界から注目されるのか『ハーブ&ドロシー』の佐々木芽生監督に聞く」https://otocoto.jp/interview/herbanddorothy/3/


曰く、


──『おクジラさま』では、シーシェパードの人たちにも、ある程度の正義があるように描かれています。多くの活動家が自己資金で旅費と滞在費を払い、ボランティアとして監視活動をしている。また、ネット社会が進んで、彼らが動画配信やSNSを使って宣伝している姿と、地元の漁師さんたちが情報を発信できずにいて世論に追いこまれている、情報強者と情報弱者の比較も興味深いです。

『おクジラさま』は捕鯨の問題をあつかっていますが、その賛否を問うているのではないのでしょう。捕鯨問題は入口であり、太地町で起きていることの向こうにある現代社会の問題、普遍的なテーマを描きたいと編集段階で考えました。現代の高度にデジタル化され、ソーシャル化された社会において、情報合戦に勝った人たちが世の中を制覇していく。アメリカのドナルド・トランプもそれで大統領になったわけです。そのようなグローバルな価値観とローカルな価値観の衝突が、いろいろなところで起きていて、そのなかで取り残されているのが地方の人たちなんだと思います。
太地町の漁師さんたちのように、自分たちの考えを発信できない人の声は、マスメディアには拾われず、わたしたち一般人にも届いてこない。ポスト・トゥルースの時代と言われますが、人々は何が真実かということに関係なく、自分に都合の良い情報だけを聞くようになっています。世界を動かしているのは、真実でも科学でもテクノロジーでもなく、人間たちの感情なので、その感情を操作する人たちやメディアが勝利していく。漁師さんたちも、このまま手をこまねいていいとは思っていませんが、「何から手をつけていいのかわからない」と途方に暮れているのです。


──映画にもあるように、子どもたちがクジラ肉を食べるのは学校の給食くらいのもので、一般的には段々と食べられなくなってきているんですよね。

ええ。ですが、海外の人たちが反対する限り、この漁や食の伝統は逆になくならないでしょう。なぜなら、クジラ・イルカ問題はナショナリズムと一緒にされている面があるからです。外国人というイルカ漁に反対する「敵」がいて、漁師さんたちが攻撃されるという構図があるうちは、「これは日本人の食文化であり、太地町の人たちの伝統なのだ」となり、あくまで抵抗する姿勢になってしまう。太地町にやってくる外国人たちは口々に「イルカやクジラ以外にも、他に食べ物があるでしょう」「イルカ漁ではなく、イルカやクジラを見守るような職業に変えればいいのでは」と提案しますが、これは単純に食料や職業の問題だけではないんです。
取材にいくと、太地町の子どもたちは「博物館にお祖父ちゃんがクジラを獲ったときの写真が飾ってあるで」とか、「お祖母ちゃんが、家にクジラの歯のネックレス持ってはる」などと教えてくれます。そこにはクジラやイルカと共に生きてきた、町民の誇りやアイデンティティがあります。もし捕獲を完全にやめてしまったら、それが失われてしまう。アラスカで環境保護団体の圧力に屈して、クジラ漁をやめた先住民たちの町では、男たちがアル中になって町自体も衰退しました。食料としての鯨肉とか、経済活動としての捕鯨という面だけでなく、もっと深い精神文化が否定されることに、太地町の漁師さんたちは抵抗しているのだと思いますね。


──『おクジラさま』は漁師さんたちと反捕鯨団体の対立を描くだけではなく、何か大きなテーマとつながっているように思います。

大きな目で見たら、太地町の漁師さんたちが求めることも、シーシェパードの人たちが願っていることも、最終的には同じところに行き着きます。それは何かというと「豊かな海の自然環境を守る」ことです。いま海の環境には、さまざまな問題があります。そのなかで、太地町の漁師さんたちがイルカやクジラを1000頭や2000頭獲ったとして、地球全体の環境を守る視点から見たら、それほど優先順位の高い問題ではないのではないでしょうか。わたしたち個々が持っている差異ではなく、お互いが持っている共通点に注目して、共にできることを考えるようになればいいのにな、とわたしは切に思います。

Kaori Shojiさんは『三里塚イカロス』*4代島治彦*5へのインタヴューも行っている;


“‘The Fall of Icarus: Narita Stories’: Victory and loss surround the world’s entry point to Japan” https://www.japantimes.co.jp/culture/2017/09/06/films/film-reviews/fall-icarus-narita-stories-victory-loss-surround-worlds-entry-point-japan/


代島さんて、『パイナップル・ツアーズ』*6のプロヂューサーだったのか。

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