藤井直敬『つながる脳』

つながる脳 (新潮文庫)

つながる脳 (新潮文庫)

藤井直敬『つながる脳』(新潮文庫、2014)を数日前に読了。


はじめに――脳科学はヒトを幸せにできるか


序章 脳と社会と私たち
第1章 脳科学の四つの壁
第2章 二頭のサルで壁に挑む
第3章 壁はきっと壊せる――適応知性の解明に向けて
第4章 仮想空間とヒト
第5章 ブレイン・マシン・インターフェイス
第6章 つながる脳


おわりに
やがて、つながる脳(川田十夢)

著者のいう「社会的脳機能」というのはとても興味深い現象であるし、著者の主張の多くに共感した。また、著者の議論は〈方法論〉の準位でも、つまり科学論(科学哲学)的にも興味深く、社会科学でいえば1960年代に勃発した〈解釈的転回(interpretive turn)〉に比することがさらりと述べられているぞとも思った(特に「四つの壁」のうちの「ココロの壁」)。ただ、幾つか基本的な事柄を巡って違和感を感じたことも事実。例えば「社会性」や「合理性」の意味。その理由のひとつは、「社会性」と言いつつ、心理学や経済学の成果は援用されていても、社会学における思考や議論の累積は全く無視されているということにあるのかも知れない。例えば、「合理性」について言えば、目的合理性と価値合理性の区別くらい考慮してよ、ウェーバーの、あの薄っぺらい『社会学の基礎概念』*1くらい読んでよ! と言いたくなってしまったのだった。
社会学の基礎概念 (1953年) (角川文庫〈第609〉)

社会学の基礎概念 (1953年) (角川文庫〈第609〉)

ところで、4章における「仮想空間」に関する議論、5章におけるBMIを巡る議論は、本全体の論旨から独立したトピックとして読んでも面白かった。