「私は偽証した場合には罰金・懲役刑を受ける可能性があることを理解しております」

栗原潔「STAP細胞特許出願に急展開:バカンティ教授が宣誓供述書提出」http://bylines.news.yahoo.co.jp/kuriharakiyoshi/20170108-00066366/


何故、みんなちゃんとチャールズ・ヴァカンティ*1と表記しないのだろうか。「バカンティ」なんて書いたら、いやんばかん……と歌い出してしまうではないか。


STAP細胞の米国国内特許出願に非最終拒絶が出ており(延長も加味した)応答期日が先日の1月6日であったことは既に書いています*2。その後、応答した記録がなかったのでてっきりそのまま放棄されるものかと思っていたのですが、なんと本当にぎりぎりの最終日に応答が行なわれていました。

応答ではクレームが3つに整理され、新規性・進歩性への対応が行なわれているのですが、特に注目すべきは、発明の実施可能性について発明者の一人であるチャールズ・バカンティ教授(久しぶりに名前を聞きました)が宣誓供述書(Affidavit)を提出しているという点です。他の発明者(マーチン・バカンティ教授、小島教授、小保方氏、若山教授、故笹井教授、大和教授)からの宣誓供述はありません。なお、この出願自体は、理研はもう関係なく、ハーバード大すらも関係なく、VCell Therapeutics Inc.という会社にすべての権利が移っているのですが、発明者としての責任は残っています。


大雑把に内容を書くと、以下のような感じです。

確かに私はNatureの論文取下げには合意したが他のほとんどの著者はSTAP細胞の概念は有効であると感じていた(栗原注:そうなんですか?)
一人の著者がデータに疑義があると述べただけなのにNatureの発表では「全員が疑義を持った」とされてしまった(栗原注:だったらなんでその時にコメントしなかったんでしょうか?)
Natureの論文取下げは内容の不備によるものであってSTAP細胞の存在自体を否定するものではない
STAP現象は(バカンティ教授による)独自の実験により再現できている

ヴァカンティ氏はたんにそういっているのではない。「宣誓供述書」は議会や裁判における証言と同様に、虚偽であれば刑事罰を蒙る。そのような「宣誓供述書」において、〈真実〉として、STAP現象が「再現できている」と書いているわけだ。
ヴァカンティの前でpost-truth*3なんて言ったら、一発で眠らされてしまうだろう。一応麻酔医なので。とはいっても、それは愛弟子の小保方晴子の場合でもそうなのだが、私たちは虚偽とは何かという問題に戸惑わざるを得ないだろう。虚偽を構成する要素は、たんに事実に反する言明ということだけでいいのか。主観的な要素、すなわち事実に反しているということを理解しつつ、敢えてそう言ってしまう、手短に言えば嘘をつくという要素も必要だということだろうか。しかし、嘘なのか悪意なき事実誤認*4なのかを言明それ自身から判定することはできないだろう。それを推定するためには、例えばポリグラフのデータを添付する必要があるのだろうか。その場合、逆に主観的には嘘だけど客観的には真実という言明だったらどうなるのだろうか、とか。