これは吃驚。
『朝日新聞』の記事;
「元俳優」という肩書はやめてほしい。詩人や学者でもそうかも知れないけれど、人は一旦役者になったら、病もうが死のうが役者であり続けるのではないだろうか。
元俳優の根津甚八さん死去 「乱」や「GONIN」2016年12月29日18時45分
陰のある二枚目役で舞台からテレビ、映画まで幅広く出演した俳優の根津甚八(ねづ・じんぱち、本名根津透〈ねづ・とおる〉)さんが29日昼、肺炎で都内の病院で死去した。69歳だった。葬儀は近親者で営む。
唐十郎主宰の劇団「状況劇場」に参加。71年、「少女仮面」の腹話術師役で評価を得て以後、「ベンガルの虎」や「唐版・風の又三郎」など、79年の退団まで状況劇場の人気役者として活躍した。テレビでは「娘たちの四季」や「冬の運動会」などに出演。山田太一脚本「男たちの旅路」の1編「墓場の島」(77年)ではスター歌手に仕立てられた若者の反逆を演じて強い印象を残した。78年の大河ドラマ「黄金の日日」*1の石川五右衛門役では、スマートな演技で茶の間の人気を得た。
映画では、黒澤明監督が「影武者」*2「乱」に起用。特に「乱」(85年)では戦国大名の息子の一人を好演した。柳町光男監督の「さらば愛しき大地」(82年)*3では地方都市で自分を見失う男を演じ、キネマ旬報主演男優賞などを得た。90年代は「夜がまた来る」「GONIN」など石井隆監督作品に出演した。
近年は心身の調子を崩して一線を退いていたが、15年、石井監督の「GONIN サーガ」に病を押して久々に出演した。
http://www.asahi.com/articles/ASJDY5FX7JDYUCLV004.html
上の記事にはちょこっと不満がある。唐十郎監督の『任侠外伝・玄界灘』*4に言及していないということ。根津甚八という役者を初めて銀幕で見たのはこの映画においてだったのだけれど、主役の安藤昇を時として圧倒してしまうような存在感は感じた。『さらば愛しき大地』は「地方都市」というよりも茨城県の鹿島臨海工業地帯附近の農村が舞台なのだけど、主人公の男が風景の変貌の中でシャブに溺れていく過程の演技は凄かった*5。
また、晩年の苦痛と苦悩に満ちた生については、下にリンクした記事を参照のこと。
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吉野太一郎「根津甚八さん死去、69歳 黒沢明監督「影武者」「乱」などに出演(UPDATE)」http://www.huffingtonpost.jp/2016/12/29/nezu-jinpachi-passed-away_n_13877270.html
「根津甚八さん死去 “生みの親”唐十郎は絶句」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161229-00000110-dal-ent
「元俳優の根津甚八さん死去 訃報に大竹しのぶ、キンキ追悼」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161229-00000362-oric-ent
「根津甚八さん死去 うつ病、死亡事故、目の病気で手術…孤独とも闘った晩年」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161229-00000108-dal-ent&pos=1
「根津甚八さん死去 目、腰、うつで闘病…10年に俳優引退」http://www.daily.co.jp/gossip/2016/12/29/0009790410.shtml
ところで、状況劇場への入団に際しては論文試験があって、根津さんは鶴屋南北論を書いたということを聞いたことがあったけど、これは何処かに発表されるのだろうか。
*1:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20111211/1323533796
*2:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101127/1290832882 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160417/1460856305
*3:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110818/1313606094
*4:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20151219/1450531223
*5:最近では、ASKAとか清原和博とか、リアルな覚醒剤中毒者が注目されているけれど、フィクションとしてのシャブ中といえば、この根津甚八か、『仁義の墓場』の渡哲也。