「アメリカは、そんな格好のいい国ではない」

承前*1

津山恵子「これがアメリカの真の姿だった 「分断」を選び、衰退の道へ」http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/11/trump-america_n_12909936.html


津山さんは紐育在住のジャーナリスト。
曰く、


9日朝、通りに出た途端、今年夏や投開票日直前に周った中西部や南西部で出会った保守的な人々のことを急に思い出した。彼らこそが、アメリカの「真の姿」だったと――。

私が2回の旅で、フォトグラファーとともに計約5000キロのロードトリップをしたきっかけは、ドキュメンタリー監督のマイケル・ムーアのコラム「トランプが勝つ5つの理由」*2(日本語訳)*3だ。ざっくりまとめると、中西部ミシガン州生まれのムーアは、中西部の有権者がどう行動するか知り尽くしている。彼らは、真に怒っている。彼らこそ、都会に多い軟弱な民主党支持者と違って、投票日に雨が降ろうが槍が降ろうが、何時間でも列に並んで、現状を変えてくれる頼みの綱で「アウトサイダー」のトランプに投票するという内容だ。

これを読んで、中西部に行こうと思った。また、投票率が低いとクリントンには痛手になるだろうとおぼろげに思っていた。


私が住むリベラルな大都会ニューヨークは、たまたま全米*4から夢の実現と富をものにしようという、人生に対する意識が「エリート」の人が集まってきている。近所のお金がないヒップスターと呼ばれる若者たちでさえ、アパートを出る時は洒落た格好をしている。新聞広告や街の看板は、現実離れをした美しいモデルやハリウッド俳優の写真に溢れている。夕方には、新しいレストランはみな制覇するつもりでいる若者やビジネスパーソンが、どっと通りに出てくる。

そしてたまたま、過去8年間、オバマ大統領とミシェル夫人という美男美女、そして黒人の夫婦が、ホワイトハウスに住んでいた。2人とも歌って踊れて、スタイルも良く、何よりも黒人であるということで、白人以外の市民に何らかの安心感を与えていた。

しかし、それは「バブル」だった。アメリカは、そんな格好のいい国ではない。

半径500キロにたった一軒の妊娠中絶ができる病院を経営していて、銃殺された医者が住んでいた街、バーで選挙の話を聞こうとしたら白人の客に怒られた街、 年金が半分になるため就職活動をしている退役軍人、小さなトウモロコシ畑を自慢にしている農家の男性、本物のカウボーイ、「ノアの箱舟」を信じているキリスト教原理主義の人々。彼らこそが、今回の選挙の「立役者」だった。

See also


Dan Roberts “My journeys in Trumpland” https://www.theguardian.com/us-news/2016/nov/13/donald-trump-president-rust-belt-white-house
長野智子「取材で感じた"隠れトランプ"の切実さとメディア不信」http://www.huffingtonpost.jp/tomoko-nagano/hidden-trump-supporters-and-media-distrust_b_12906242.html


長野さんが訪れたのは「スイング・ステート」としてのオハイオ州
ただ、荒廃した「ラスト・ベルト」ということばかり注目すると、(現象としての)ドナルド・トランプの恐ろしさの半分は隠蔽されてしまうような気がする。
さて、上でも言及されていたマイケル・ムーア*5を巡って;


Chris D’AngeloMichael Moore Predicts Donald Trump Won’t Last The Full 4 Years” http://www.huffingtonpost.com/entry/michael-moore-predicts-trump-impeach-resign_us_58261464e4b0c4b63b0c6dee *6
Catherine Shoard “Michael Moore: Oprah Winfrey or Tom Hanks for US president in 2020” https://www.theguardian.com/film/2016/nov/14/michael-moore-oprah-winfrey-tom-hanks-us-president-donald-trump-democratic-party