うるさいからいいのでは?

田端あんじ*1「風鈴が鳴る音は迷惑!? 東京都環境局HPの “生活騒音” の対象に『風鈴』が含まれていることが判明!」http://www.excite.co.jp/News/woman_clm/20160701/Pouch_364952.html


何十年か前に、風鈴というのは秋になったら直ぐに撤去すべきで、季節外れの風鈴は無粋きわまりないと怒っていた人がいた。それを聞いて、なるほどと思いながらも、錆び付いた風鈴が冬の北風に吹かれている光景にも荒廃した情緒があるじゃないかと思った。
風鈴の音が「生活騒音」の源のひとつとして認定されているということだけど*2、私たちが生きることそれ自体が「騒音」を発生させているのであって、人工知能だったら、人間を全員殺せば「生活騒音」はなくなるよと答えるかも知れない。「暴風吹き荒れる中」けたたましく鳴りまくる風鈴はたしかにうるさい。しかし、そういうときは風自体がうるさいのであって、「水伝」はあっても〈風伝〉はなく、風さんには文句が言えないので、責任の所在がはっきりしている(人間が設置した)風鈴に怒りの矛先が向かうことになる。でも、そういう状況では、風鈴云々というよりも、あなたのボロ家が吹き飛ばされないかどうかを心配すべきだよ。風鈴の音にいらつく人は(例えば)鹿威し*3の音を聴いたら発狂してしまうのではないだろうか。或いは、鳴子というのもある。これらは元々畑を荒らす獣たちを大きな音で威嚇し・追い払うためのもの。また、悪しき者ども、例えば害獣、悪霊、曲者の訪れ(音連れ)を察知し、警告するセンサーとして機能していたわけだ。そもそも風鈴も邪気を除けるためのものだった。Wikipediaに曰く、


日本では民家の軒先に吊るす風鈴がいつから存在するのかはっきりしないが、寺では通常、相輪や堂の軒の四方に「風鐸」(ふうたく)と呼ばれるものが吊り下げられている。これらは青銅でできており、強い風が吹くとカランカランというやや鈍い音がする。強い風は流行病や悪い神をも運んでくると考えられていたことから、邪気除けの意味でつけられており、この音が聞こえる範囲は聖域であるので災いが起こらないという。中国では唐の時代に竹林の東西南北に風鐸を吊り下げて物事の吉兆を占う「占風鐸」というものがあり、それが日本に仏教建築文化とともに伝来したと考えられる。平安時代後期には貴族の屋敷でも軒先に魔除けとして風鐸を吊るしたことがあったというがよくはわかっていない。「風鈴」という表記は鎌倉末期に作られたとされる国宝『法然上人行状絵図』に「極楽の七重宝樹(しちじゅうほうじゅ)の風のひびきをこひ、八功徳池(はっくどくち)のなみのをとをおもひて、風鈴を愛して」とあるが、これは「ふうれい」と読む。絵図の作者が風鐸と書かずに風鈴と記したのは中世には鈴を持って踊るさまざまな田楽風流踊りが各地で流行したことが影響したとも考えられる。

強い風とともにやってくる疫病や魔を除けるための器物として用いられてきた青銅製の風鐸であるが、気温湿度が上がり菌が繁殖しやすく病も広まりやすい暑くなる時期の魔除け道具、すなわち暑気払いのための器具として次第に定着していく。古代のシルクロード経由の色ガラスではない、無色透明ガラスの製法が18世紀にオランダ経由で日本に伝わると、19世紀には江戸でガラス細工が盛んになり、江戸時代末期にはビイドロ製の吹きガラスで作られた風鈴が江戸で流行を見せる。大正期には岩手県の名産である南部鉄器の産地でも鉄製の風鈴を作るようになった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E9%88%B4

今年は熊が民家に突撃する事件も報告されている*4。鹿威しとか鳴子といった伝統的な威嚇手段を見直してみるというのもありだろう。風鈴が何時になくうるさいので見てみたら、下着泥棒がヴェランダから逃げようとしていたということもあるかも知れない。
See also


iroha810「夏の風物詩「風鈴」その涼しげな音はうるさい?」http://matome.naver.jp/odai/2137481491412748701