「捏造」事件2つ

STAP騒動勃発以前では、「捏造」といえば東大の「分子細胞生物学研究所」だったのだ*1
『朝日』の記事;


東大論文、33本の捏造・改ざんを認定 最終報告書

竹石涼子、浅井文和

2014年12月26日11時27分

 東京大学は26日、分子細胞生物学研究所の論文捏造(ねつぞう)や改ざんの疑いがあった51本の論文のうち、33本に捏造や改ざんがあったと認定し、11人が関与していたとする最終報告を発表した。このうち、加藤茂明元教授ら6人は懲戒処分が相当とした。15億円の公的研究費は返還を含めて検討中という。

 調査報告をまとめた科学研究行動規範委員会によると、調査対象は論文51本の著者193人。論文の捏造・改ざんなどの不正が認められた33本のほか、10本は不適切な図があり、8本は訂正が可能な部分があったとした。実験をやり直す十分な時間を与えず、強圧的な指導が行われたことなどが不正を起こした要因としてあったと指摘した。

 懲戒処分相当とされたのは、加藤元教授のほか研究室の中核メンバーだった柳澤純元助教授、北川浩史・元特任講師、武山健一元准教授。高田伊知郎、藤木亮次の両元助教も図の捏造・改ざんに関与したなどとして、懲戒処分が相当とした。

 不正にはこのほかに大学院生など5人も関係していたが、「従わざるをえない」状況にあったと認定。指導的立場にあった人の責任は重いとした。懲戒処分相当とされた6人については懲戒委員会で審議し、退職金の返納などを含めて検討する。(竹石涼子、浅井文和)
http://www.asahi.com/articles/ASGDV365LGDVULBJ00D.html

さて、STAP細胞論文を巡る理研の「調査委員会」(第二次)の報告*2について。『毎日』は「STAP論文は、ほぼすべて否定された」ことを強調して報じている;

STAP論文:「ほぼすべて否定」理研調査委が結論付け

毎日新聞 2014年12月26日 11時41分(最終更新 12月26日 18時41分)


STAP細胞論文を巡る問題で、理化学研究所の調査委員会(委員長、桂勲・国立遺伝学研究所長)は26日、最終報告書を発表した。論文でSTAP細胞由来とされた細胞は、既存の万能細胞であるES細胞(胚性幹細胞)だったとし、「STAP論文は、ほぼすべて否定された」と結論付けた。一方、ES細胞の混入については「誰かが故意に混入させた疑いをぬぐえない」としたが、故意か過失か、誰が行ったかは決定できなかった。また、新たに2件の図表で著者の小保方(おぼかた)晴子・元理研研究員(31)による捏造(ねつぞう)を認定した。

 STAP細胞の有無を確かめる理研の検証実験では、小保方氏本人を含め作製できなかったが、調査委も「STAP細胞がなかったことはほぼ確実」との見方を示した。

 理研の最初の調査委は3月、関連論文2本のうち主論文の画像2件で小保方氏の不正を認定した。両論文は7月に撤回されたが、新たな疑義が多数残り、理研が外部有識者7人で構成する別の調査委を9月に設置。15回の会合を開き、小保方氏や共著者の若山照彦・山梨大教授の研究室などに残っていた細胞などを詳しく調べた。

 STAP細胞を無限に増えるように変化させた複数の幹細胞の遺伝子解析をした結果、理研で作製されたES細胞と99%以上一致した。さらに、論文中で万能性を証明する根拠となったマウスや良性腫瘍なども、ES細胞による実験で作られた可能性が非常に高いと指摘した。ES細胞では作れないとされる論文中の胎盤の画像についても、「胎盤であるという証明はない」(桂委員長)と否定した。

 調査委は、ES細胞を混入させる機会があったとみられる全関係者に聴取したが、いずれも関与を否定し、小保方氏も「私がES細胞を混入させたことは絶対ない」と答えたという。

 新たに小保方氏による捏造と認定されたのは、主論文中の細胞の増殖率を比較するグラフと、遺伝子の働き方が変わる現象を示す図。さらに小保方氏が担当した実験では基になるデータがほとんど存在せず、「研究の基盤が崩壊している」と指摘した。不正認定された図表は「氷山の一角」に過ぎないとした。調査委によると、小保方氏は1点の捏造について「(共著者に)もとのデータでは使えないと言われ、操作した」との趣旨の発言をしたという。
http://mainichi.jp/select/news/20141226k0000e040229000c.html

調査委は、不正の背景について、若山氏の「過剰な期待」があったと分析。データの正当性を検証しなかった若山氏が「捏造を誘発した」として、その過失責任は極めて重大とした。また、論文のまとめ役となった笹井芳樹・元理研発生・再生科学総合研究センター副センター長は8月に死亡したため調査対象としなかったが、「明らかに怪しいデータを追及する実験を怠った」責任は特に大きいと判断した。

 理研は今回の調査結果を受け、手続きが止まっていた懲戒委員会を再開させ、関係者の処分について検討する。記者会見した有信睦弘(ありのぶ・むつひろ)・理研理事は「調査は尽くしたので、これ以上やるつもりはない。研究費返還を求めるかどうかは決めていない」と述べた。小保方氏は11月末までの検証実験でSTAP細胞を作製できず、今月21日に理研を退職した。理研は小保方氏と連絡が取れておらず、報告書を渡していないという。【八田浩輔】
 ◇理研調査委の報告書骨子

・STAP細胞が万能性を持つ証拠となる細胞、組織、マウスは、すべてES細胞からできていた。論文の主な結論が否定された

・ES細胞の混入は誰かが故意にした疑いをぬぐえないが、混入が故意か過失か、誰が行ったかは決定できなかった

・新たに二つの図表を小保方氏の捏造と認定。それ以外の図表も、基になるオリジナルデータや実験記録がほとんど存在しない

・若山氏ら共著者の不正行為は認定されなかったが、共著者には怪しいデータを見逃し、確認を怠った責任がある
http://mainichi.jp/select/news/20141226k0000e040229000c2.html

記事を読んで印象に最も残ったのは、STAP細胞ES細胞ということと、若山照彦*3に対する強い指弾であった。
『朝日』は小保方代理人のコメントを伝えている;

小保方氏がES細胞混入「考えられない」 代理人

朴琴順

2014年12月26日14時50分


 小保方晴子氏の代理人を務める三木秀夫弁護士は26日午後、大阪市内の事務所に詰めかけた報道陣に対して、理研の調査委員会がSTAP細胞ではなくES細胞が混入されていたと結論づけたことに、「そのようなことはないと思っていたので、困惑している」「(小保方さんが)自分でES細胞を入れるとは到底考えられない」と話した。

 三木弁護士は調査委の結論について、「あれだけ広範囲に調査を行って、故意か過失か分からない、誰かも分からないということ。なのにメディアが(小保方氏が)犯人だと前提にして報道されているのは理解できない」と不満を述べた。

 一方、調査委による聞き取り調査の中で、小保方氏が論文のデータの一部を操作していたことを認めていた点に関しては、三木弁護士は「何も聞いていないので分からない」と話した。

 調査委員会の調査について「『STAP細胞』の検証実験に集中させたがったが、その最中の聞き取り調査で、過酷な状況が重なり、かわいそうだった」と述べた。小保方氏は最近は体調が非常に悪く、弁護団からも連絡がとりにくくなっているという。(朴琴順)
http://www.asahi.com/articles/ASGDV4K3KGDVPLBJ007.html

小保方さん、「調査委員会」の報告に逐一反論していくのだろうか。それとも耐へ難きを耐へ忍び難きを忍び、無条件降伏してしまうのだろうか。

ところで、古田彩、詫摩雅子「「STAP幹細胞」として用いられたES細胞を特定 東大,東北大など」という12月24日付けの記事*4で言及されている東大と東北大の分析というのは理研の「調査委員会」の分析とは独立であるわけですよね。そうすると、STAP細胞ES細胞という仮説を支持する独立した分析がさらに出現したわけだ。