阿部謹也『自分のなかに歴史をよむ』

自分のなかに歴史をよむ (ちくま文庫)

自分のなかに歴史をよむ (ちくま文庫)

阿部謹也*1『自分のなかに歴史をよむ』を読了。
大学2年生のときに著者の恩師である上原専禄の家を初めて訪ねたエピソードで始まり、ヴェルナー・ヘルツォークの映画『フィッツカラルド』で終わる本。
先ず目次を写しておこう;


第一章 私にとってのヨーロッパ
第二章 はじめてふれた西欧文化
第三章 未来への旅と過去への旅
第四章 うれしさと絶望感の中で
第五章 笛吹き男との出会い
第六章 二つの宇宙
第七章 ヨーロッパ社会の転換点
第八章 人はなぜ人を差別するのか
第九章 二つの昔話の世界
第十章 交響曲の源にある音の世界


あとがき
解説:「ヨーロッパ中世社会」との出会い――小樽での会話から(山内進

阿部謹也は自伝的な文章を何度か書いているが、これはそもそも1988年に中学生・高校生向けとして上梓されたもの。目次を見ればわかるように、第一章から五章までは、自伝というか、阿部謹也自身のライフ・ヒストリー(life history=生の歴史)が語られており、この章を境に自らの(当時にとっての)最近の研究の語り直しに転じている。ライフ・ヒストリーからソーシャル・ヒストリー(社会史)へ。勿論、自伝性が完全に消えてしまうわけではないし、この2つのヒストリーは最後の第十章で合流しているともいえる。中高校生向けという制約の故なのか、この本には註とか参考文献リストとかは全くない。特に後半部については、著者の他の本、例えば『刑吏の社会史』、『ハーメルンの笛吹き男』などを参照すべきであろう。
フィツカラルド [DVD]

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刑吏の社会史―中世ヨーロッパの庶民生活 (中公新書 (518))

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ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界 (ちくま文庫)

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