「心肺停止」再び

承前*1

日本のメディアが使用する「心肺停止」という表現に疑問を抱いたのは私だけではなかった;


碓井真史*2「「心肺停止」表現のやさしさと厳しさ:ご遺族のため、警察消防自衛隊員のため:両者の心のケアのため」http://bylines.news.yahoo.co.jp/usuimafumi/20141004-00039689/
御嶽山噴火でも使われた「心肺停止」 なぜ「死亡」といってはいけないのか」http://www.j-cast.com/2014/09/29217057.html?p=all


碓井氏のテクストで興味深かったのは、


家族が自宅で亡くなったり、外で事故死した場合、救急車は遺体を運んではくれない。自宅で亡くなり、医師の死亡診断書がもらえないと、変死扱いになる。遺族にとっては辛いことだ。

救急車を呼ぶ。救急隊は、明らかに亡くなってると判断すれば、そのまま帰ろうとする。家族の中には、かなり強引に、死んでいるかどうかはわからない、病院へ運べと、救急隊を説得する人もいるという。病院へ行けば、最後の蘇生法を施してくれるかもしれない。そうでなくても、丁寧に扱ってもらえるだろう。

という指摘。
J-CASTニュースの記事から;

関西福祉大学勝田吉彰教授によると、「日本で心肺停止の状態とは、心音が聞こえない『心臓停止』および『呼吸停止』の状態を指します」という。死亡確認にはこの2つだけでは十分ではなく、「脈拍停止、瞳孔散大と合わせて、4つすべてを医師が診断することが必要です。医師が宣言し、初めて死亡が確定します」と語る。海外ではこうした手順が踏まれるとは限らないため、日本と大きな違いが出ているようだ。

長野県警も、「医師の診断がまだできておらず、心音と呼吸が停止していることから判断」(同広報)して、「心肺停止の状態」と発表している。

なお、心肺停止の状態から息を吹き返すケースはある。たしかに、街中で倒れた人が心臓マッサージやAEDを施されたり、病院で強心剤を投与されたりして蘇生することはある。ただし、あくまで迅速に必要な手当てがされた場合がほとんどだ。(後略)

不幸なことではあるが、今回の御嶽山の噴火における「心肺停止」はこれに当て嵌まるものではない。

さて、


「「御嶽山NHKアナや小倉さんが「みたけさん」 プロが読み間違えた同情すべき事情」http://www.j-cast.com/2014/09/30217199.html?p=all


曰く、


2014年9月29日、「正午のニュース」(NHK総合)で高瀬耕造アナウンサーは「みたけ、おたけさ、みたけさんの噴火で―」とニュース原稿を読み始めたところ、画面外のスタッフから「おんたけさん!」と注意が入った。

同じく29日に放送された情報番組「とくダネ!」では、司会の小倉さんが現場のリポーターに中継をつなぐ際、「現在、どんな活動が行われているのか。みたけさん、いや、おんたけさんの―」と間違えてしまった。2人の読み間違えに対し、「この期に及んで御嶽山をみたけさんだなんて」「もう引退したほうがいいんじゃない?」などと怒りの声をツイッターに投稿する人もいた。

しかし、2人が間違えてしまったことは、同情の余地がない訳ではない。首都圏以外の人にはなじみがないかもしれないが、東京都青梅市には標高929メートルで気軽に登山が楽しめる「御岳山(みたけさん)」という山がある。

一文字違いということで、「御岳山が噴火するはずないし!と思ったら御嶽山」「多摩県西部民にとって御嶽山と御岳山はややこしい」と、今回の噴火では勘違いした人が相次いだ。

沖縄の人だったら、ウタキサンというんじゃないか*3。まあ俺も一瞬、奥多摩の話なのか信州の話なのか迷ったのだった*4
あと、「御岳」なのか「御嶽」なのかという問題。
それから、「硫黄」と「硫化水素」は違うということ;



御嶽山リポート「硫黄のような臭いが・・・」 東大教授がツッコミ「硫黄は無臭だ」
2014/9/30 15:20


「辺りは暗くなってきました。機内に硫黄のような臭いが立ち込めています」――。長野、岐阜県境にある御嶽山の噴火の様子を、情報番組のリポーターがヘリから伝えた。

すると、放送からわずか1分後。東大教授から「硫黄は無臭だ」とツイッターでツッコミが入った。


「化学で習ったでしょといつも思う」
ツッコミを入れられたのは、2014年9月28日放送「真相報道 バンキシャ!」(日本テレビ系)の冒頭でヘリからリポートをした濱田隼平アナウンサーだ。山頂から約5キロの地点で、迫力ある映像とともに御嶽山の状況を伝えていた。

これに即座に反応したのが東大大学院理学系研究科の鍵裕之教授。「バンキシャの冒頭、御嶽山からのアナウンサーのレポートは『硫黄のような臭い』で始まったが、硫黄は無臭だ」と、該当する場面の放送からわずか1分ほどでツッコんだ。

温泉街などで感じる、いわゆる「硫黄の臭い」は硫黄と水素の化合物である硫化水素によるもの。硫黄そのものは無臭ということだ。

「硫黄のような臭い」はメディアではしばしば使われる表現で、濱田アナに限らず、新聞や報道番組でもたびたび登場する。学術的には間違っているが、慣用として定着してしまった表現の1つと言えるかもしれない。

鍵教授の指摘には、

「化学系の人には常識なのだけれどね」
「化学で習ったでしょといつも思う」
「そろそろ硫黄は無臭で硫化水素だということをメディアは広めるべき」

など、以前からメディアの伝え方に疑問を持っていた人から歓迎されている。

一方で、「一般人は『硫黄臭い』って言ってもらわんと分からん」という意見があり、「硫化水素の臭い」が定着するにはまだ時間がかかりそうだ。
http://www.j-cast.com/2014/09/30217143.html