国難或いは藝術と工藝など

承前*1

東京新聞』の記事;


大英博物館春画展 巡回、日本では拒否


2013年10月2日 夕刊

 【ロンドン=石川保典】ロンドンの大英博物館で三日から、男女の性愛を描いた日本の春画の大規模な展示会が始まる。巡回展が日本でも企画されているが、博物館、美術館からは軒並み断られ、開催が危ぶまれている。

 展示会は日英交流四百年を記念。葛飾北斎喜多川歌麿をはじめとした浮世絵師の約百七十点を展示、春画の歴史からピカソロートレックなど欧州の芸術家に与えた影響までひもとく。作品は大英コレクションのほか、日米、欧州から集めた。

 展示会は、ロンドン大や立命館大、大英などが四年前からプロジェクトチームを組んで研究してきた成果。大英のティモシー・クラーク日本部門代表は「西欧では性的に露骨なアートは禁じられてきた。この春画展は、わいせつとアートの関係を観客に考えさせるだろう」と話す。

 出品作品の選定にあたった立命館大特別研究員の石上阿希さんは「浮世絵や歌舞伎などの文芸と同じ土壌で江戸時代に花開いたのに春画だけがタブー視されて研究もされてこなかった」と話している。

 巡回展が決まっていない現状に、プロジェクトチームのガーストル・ロンドン大教授は「春画は大切な文化。出版は禁止されていないから展示会は可能だと思っていた」と残念がる。大英の展示会は来年一月五日まで。十六歳以下は親同伴。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2013100202000229.html

先ず突っ込んでおくと、「男女の性愛」だけでなく男男や女女もあります。それから、「十六歳以下は親同伴」ということだけど、BBCの報道によれば、”Because of its explicit nature, the British Museum's exhibition can only be seen by people over the age of 16. “とあり*2、そもそも16歳未満は入場禁止なのではないか。まあ「どこかしらの「道徳的」市民団体の抗議とかを想定して、日本の博物館や美術館は腰が引けてるんだろうなあ」ということなのだろうけど*3、「開催を断った博物館・美術館の一覧がほしいですなあ(^^;)」という意見もあり*4。さて、この国辱と国難に対して、例えば「愛国先生」*5は如何に対応するのだろうか。


Alastair Sooke “Sexually explicit Japanese art challenges Western ideas” http://www.bbc.com/culture/story/20131003-filth-or-fine-art


この中で、Timothy Clark氏*6の「藝術と猥褻なポルノグラフィという区分は西洋的な概念である(The division between art and obscene pornography is a Western conception)」という言葉が引用されているのだが、これは寧ろ「西洋的(Western)」というよりは近代的(modern)というべきかも知れぬ。実用性(道具性)が括弧に入れられることによって、工藝から区別された(近代的な意味での)藝術(fine art)が構築される*7