最近観たJohnnie Toの『単身男女(Don't Go Breaking My Heart)』*1は久しぶりのおばかな映画。因みに、〈おばかな〉というのは貶し言葉ではなく褒め言葉である。金融エリートの張申然(古天楽)、建築家の方啓宏(呉彦祖)*2、そして金融アナリストの程芷恩(高圓圓)の三角関係を巡るラブコメ。前半は香港、後半は(芷恩の故郷である)蘇州が舞台。筋は3人の間の擦れ違いが進行し、最後は2人の男のうちのどちらかが勝つというラヴ・ストーリーの定石に従ったものなので、特に述べる必要はないだろう。少し違った角度からこの映画を語れば、先ず建物と建物の関係についての物語である。程芷恩のオフィスのあるビルと張申然のオフィスのあるビル。ところが、2008年のリーマン・ブラザーズ破綻に端を発する世界金融危機*3によって張申然の会社は倒産。その3年後、 建築家の方啓宏はかつての張申然のオフィスにオフィスを構え、張申然は程芷恩の会社のボスに就任する。また、後半の蘇州篇では、方啓宏が設計した高層ビルと、その向かいにあるシャングリラ・ホテルの間で物語が進行する。また、この映画は〈通信〉についての映画でもある。原始的な通信手段と先端の通信手段。ビルとビルの間のコミュニケーションはインターネットでもケータイでもなく、紙に書いた文字を窓越しに交換するという原始的な仕方で行われる。その原始的コミュニケーションがスマート・フォンによる生動画の発信という先端的なコミュニケーションと対比される。さて、Johnnie Toの映画では、人間だけでなく、例えば空罐(『エクザイル/絆』)*4や猿山の猿(『エレクション』)まで演技をさせられる。『単身男女』で演技をさせられる動物は蛙。
とにかく、『エクザイル/絆』辺りを観て、Johnnie To凄ぇ! と思っているような人は是非観るべき映画ではあろう。
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*1:See http://baike.baidu.com/view/2942339.htm http://ent.hunantv.com/o/f/20110407/888709.html http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110406/1302062441
*2:最初ホームレスみたいなかっこうで登場したので、ホームレスが朝から〈ジョニ黒〉を飲んでいる香港は凄ぇなと思ったのだった。
*3:See eg. http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080921/1221927666 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081007/1223316170 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081023/1224739582 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091029/1256834918