罪人でも英雄でもなく

承前*1

地震の衝撃によって〈「ヤフー知恵袋カンニング事件〉も霞んでしまった感はあるが、少しメモ。
『日刊スポーツ』の記事;


予備校生、股から「古典的」左手早打ち


 京都大の入試問題をインターネットの質問サイト「ヤフー知恵袋」に投稿したとして、偽計業務妨害容疑で逮捕された仙台市の男子予備校生(19)が、京都府警の調べに「携帯電話を股に挟み、左手で文字を打った」と供述していることが4日、分かった。スマートフォンではなく、一般の携帯電話を使用していたといい、試験中、試験官の目を盗み、問題文を「高速手打ち入力」していた可能性が高まった。一方、京大にはこの日、対応に関する抗議電話が殺到した。

 予備校生は2月26日、京大の英語の入学試験中「aicezuki」名で携帯電話を使ってヤフー知恵袋に試験問題を投稿した疑いが持たれている。同日は午前9時37分と同45分の2回、問題が書き込まれた。

 方法について、これまで携帯のカメラで撮影し外部協力者が投稿したとする説や、小型偽装カメラ使用説などの“ハイテク”手口が推理されたが、実際は「古典的」だった。府警の調べに予備校生は「自分の席で携帯を脚の間に隠し、左手で問題文を打ち込んだ。試験官が近くを通る時には脚を閉じて隠した」と供述。またaicezuki名については「何となくつけた。特に意味はない」と話しているという。

 府警によると、使ったのはタッチパネル式のスマートフォンではなく一般の携帯電話。この携帯には、文章を自動的に取り込むスキャナー機能が付いていないことも判明し、投稿をすべて、単純な手打ちで入力していた可能性が高まった。

 予備校生は英語の試験会場では、教室の前方左隅という見えにくい位置に座っており、この携帯を机の下に隠し股に挟んでいたとみられる。利き腕の右手で筆記具を持ち、試験官の目を盗み、左手で問題を高速で手打ち入力。時折同サイトに寄せられた回答を携帯でチェックしつつ、右手で答案用紙に書き写すなどしていたと思われる。

 この手口について他大学の入試担当者は「普通は気付くと思うのだが…」。2月25日の数学試験では、aicezuki名で約34分間に6回投稿された。公立大職員は「あそこまで何度も投稿されていると(試験官が)寝ていたと言われても仕方ない」と手厳しい。

 この携帯は逮捕時にも所持。府警は、こうした「器用な手口」(捜査幹部)が実際に可能かどうか確かめるため、押収したこの携帯を使って近く再現実験を実施。長文や特殊記号が交じった投稿だったことから、府警は事前に高速入力の練習を重ねたとみている。

 一方、予備校生は、同名で投稿された同志社、早稲田、立教の3大学の入試についても「自分で投稿した」と供述。警視庁は4日、早大、立大の被害届を受理した。

 [2011年3月5日9時0分 紙面から]
http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp0-20110305-744630.html

J-CASTニュース

京都大学、お前は死んだ!」 茂木健一郎ツイッターの過激


2011年3月4日(金)20時29分配信 J-CASTニュース 

入試ネット漏えい事件で、京大に対し、警察に被害届けを出すのはやり過ぎだ、などと異論が相次いでいる。京大には、200件以上も批判が寄せられているが、大学側は、データ照会できないので警察の協力を求めたと説明している。
カンニングで逮捕させるのは、やり過ぎでは」
テリー伊藤さん「違和感がある」
「見逃した京大にこそ、監督責任がある」

仙台市内の男子予備校生(19)逮捕から一夜明けた2011年3月4日、京大には、電話などでこんな意見が殺到した。これまでに250件ほども寄せられており、被害届け提出に賛成する声もあったものの、その9割以上が批判だという。「マスコミは騒ぎ過ぎだ」といった声も多く、4日だけで150件ほどに達する反響ぶりだった。

京大などの対応については、識者などからも、異論が相次いでいる。

3日放送の日テレ系「スッキリ!!」では、司会のテリー伊藤さん(61)が、大学が警察に頼ったのには違和感があると告白した。京大など4大学をすべて受けている受験生は限られているため、大学同士が協力し合えば警察に頼らず受験者を特定できたはずだと指摘したのだ。カンニングで逮捕されたことは異例のため、「すごい前例をつくることになる」と疑問を呈した。

さらに過激だったのが、脳科学者の茂木健一郎さん(48)だ。

茂木さんは、ツイッターで3日、京大の被害届け提出は、自由な学風の伝統を踏みにじるものだと強く指弾。予備校生が逮捕されると、「世界の笑い者」などと揶揄し、「京都大学、お前は死んだ!」と叫んだのだ。新聞やテレビも無批判で逮捕を報じているとして、「日本のクズメディア、予備校生が逮捕されて満足か?」「お前らが、日本を沈ませている」と激しくやり込めた。

4日には、ブログも更新し、ヤフー知恵袋に寄せられた回答と受験生の答案を付き合わせれば特定できたとして、少なくとも大学は警察が特定した時点で被害届けを取り下げるべきだったと改めて批判した。
「データ照会できないので警察の協力を求めた」

大学が警察に頼るべきでない理由として、茂木健一郎さんは、大学の自治を自ら放棄するような行為であることのほか、受験生に対し教育者の立場からの配慮に欠けていることを指摘した。過去にカンニングをした受験生らとの公平性からも、警察に突き出すのは疑問だとしている。

京大などの対応については、大学関係者からも異論が出ているようだ。

北大大学院法学研究科の町村泰貴教授は、2011年3月3日のブログで、「カンニングで逮捕は行き過ぎだ」と訴えた。過去のカンニング例と比較して取り立てて悪質だとは言えず、大学の監視が行き届かなかったに過ぎないと言う。マスコミがネットの闇のように騒いでいるのはおかしいともした。

一方、大学の対応に理解を示す向きもある。甲南大法科大学院園田寿教授は、産経新聞の1日付記事の中で、入試業務を不正な手段で妨害したとして偽計業務妨害に問われることについて、「入試問題が流出して入試全体のやり方について支障が生じているので、業務を妨害されたとして罪に問うのも妥当」だとコメントしている。

前例がないだけに、京都府警も、予備校生の逮捕について弁明に追われた。報道によると、府警は、「難しい事件」としたうえで、社会的な反響の大きさや一時行方不明になったことを逮捕の理由に挙げた。予備校生がほっとした表情だったともしており、自殺をほのめかしていたことから保護する必要もあったと言いたいらしい。

京大の広報課では、被害届けを出した理由について、「大学では携帯電話のデータ照会ができませんので、司法の協力を求めることにしました」と言う。独力で特定できたのではといった指摘には、「今の段階では、コメントできることではありません」と話した。

被害届けは、取り下げておらず、今後についても分からないという。予備校生については、不正が判明し次第、失格にするとしている。 
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/jcast-89749/1.htm

茂木健一郎*2の言っていることは別に「過激」でも何でもないよ。ただ、「大学の自治」というのは久しく聞かない言葉ではあるが。前にも書いたけれど、「カンニング」というのはそもそも民事に属することであり、それを刑事事件にしてしまったというカテゴリー・ミステイクが問題なのだ。また、少し厄介なことがあると安易に〈官〉に依存しようとする意識が日本におけるカイカクの進捗を遅らせているのだと、新自由主義者、特に「減税日本」支持者あたりは批判すべきなのだろうとは思う。
しかしながら、この「aicezuki」という人物をhttp://anond.hatelabo.jp/20110310153347のように英雄視する気にもなれない。彼は罪人でも英雄でもなく、ただの敗者だよ。つまり、ばれちゃったならしかたねぇやということ。彼には2つの選択肢しかないのだろう。来年はばれないようにもっと巧く「カンニング」する。或いは、もう〈邪道〉は止めて真面目に受験勉強する。そのどっちか。