ISBNの威力

『読売』の記事;


官能小説公費購入?県議「別の客のレシート」



 複数の福岡県議が2009年度に政務調査費で購入し、収支報告書にレシートを添付していた書籍には、「調査研究」という政調費の趣旨を逸脱したものが散在していた。購入費を県に返す考えを示す議員がいる一方で、「世情を知るため」「何が問題なのか」と支出の正当性を主張する議員もおり、公金に対する意識の低さをうかがわせた。

 冨原茂昭議員(66)のレシートには手書きで、炭坑に関する本を購入したような記入があった。しかし、実際の本は、官能小説「素人手記ひとつ屋根の下」と判明。レシートによると、09年10月29日夜、福岡市・天神の書店で買ったことになっている。

 冨原議員は「小説のことも手書きのことも記憶にない」としたうえで、「領収書の処理は事務所スタッフに任せており、何らかの理由で官能小説のレシートが混入したのかもしれない。うっかりミスだと思うが、申し訳ない。ミスがはっきりした段階で、返金が受け付けられるなら、購入費分を返したい」と語った。

 後藤元秀議員(60)が提出したレシートにある官能小説は、09年11月9日午後、時代小説とともに成田空港の書店で購入したことになっている。後藤議員は「その書店で数冊買ったが、官能小説は購入していない。収支報告書を提出する前に、党の指導でよく調べたら官能小説のレシートだった。別の客のものかと思ったが、忙しくてそのまま出してしまった」と説明した。

 取材に対して当初、「時代小説は買った」と話していたが、記者が「レシートでは時代小説と官能小説は2冊一緒に買っている」と指摘すると、「時代小説も買っていない。思い違いだった」と前言を撤回した。レシートは6日にも取り下げるという。

 別の日には、福岡市内でDVD付きの太極拳のマニュアル本も購入。「体得して地域のお年寄りに勧めようと思った」と述べた。

 高橋雅成議員(52)のレシートからは、村上春樹氏のベストセラー長編小説「1Q84」の1、2巻や若者向けのライトノベル新撰組隊士を描いた浅田次郎氏の小説「壬生義士伝」(文庫・上下巻)など最多の計14冊が確認された。

 高橋議員は「世情を知る正当な支出」と強調。しかし、「壬生義士伝」は10年前に書籍化された点を記者が指摘すると、一瞬言葉に詰まり、「今、時代は乱世だ。激動の時代に自分が生きる道を見つけるために買った」と弁明した。

 「ラジオ深夜便読本」「NHK俳句4月号」などを購入していた入江種文議員(61)(民主・県政クラブ)は「文章を書いたり、地域の方々と話をしたりするのに様々な知識が必要。何が問題なのか」と話した。

 日本大学の岩井奉信(ともあき)教授(政治学)の話「議員の間に『政務調査費は第2の議員報酬だ』という意識があるとしか思えない。政務調査費とはそもそもどういう経費なのか、理解していないのではないか。書籍名や購入理由などの記載を義務化すれば、不適切な購入の抑止につながるだろう」

(2010年7月6日15時34分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100706-OYT1T00126.htm

2007年2月の記事*1

自民品川区議団、政調費報告に漫画やポルノ小説領収書

 東京都品川区議会の自民党区議団が、政務調査費の収支報告書に、漫画や推理小説、ポルノ小説などの領収書を添付していたことがわかった。

 提出された書店の領収書は一見しただけでは書籍名はわからないが、レシートにある識別番号からわかった。同区議団は「不適切なものがあった」として、政調費の返還に向け過去の収支報告書などを調べている。

 同区議会は、収支報告に書籍名の記載を求めていない。だが大手書店などのレジで印字されたレシートには、「ISBN(国際標準図書番号)」と呼ばれる識別番号が記載されており、書籍名が特定できる。

 読売新聞の情報公開請求に対し、議会側が開示した2004年度〜06年度上半期の2年半分の領収書を調べた結果、辞典や評論書のほか、山村美紗さん、内田康夫さん、大沢在昌さんらの推理小説やハードボイルド小説などが少なくとも11冊あった。

 また4コマ漫画雑誌2冊、少年向けコミック3冊のほか、ポルノ小説も4冊。徳大寺有恒さんのロングセラー「間違いだらけのクルマ選び」や、焼酎の選び方などを解説した本、囲碁の本なども含まれていた。

 同区議会は、「書籍の内容まで調べるのは議員の政務活動を委縮させる恐れがあり、適当でない」(区議会事務局)としている。これに対し、新宿区議会では「適正な支出であることを区民に明らかにする」として、書籍名などの記載を求めている。

 自民党品川区議団の須藤安通幹事長は「会派としてのチェックが甘かった。官能小説などが含まれているのは確かで、精査の上、政務調査になじまない書籍代は返還したい」と話している。

 政調費は議員報酬とは別に、自治体の議員の調査研究活動などのために支給される経費で、品川区の場合、区議1人当たり年間228万円になる。

(2007年2月18日3時14分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070218i501.htm

元の記事には問題となった「レシート」の写真が添えられているけれど、そのレシートには書名は記載されておらず、ISBNしか打ち出されていない。だから、この記事はISBNから書名を逆検索しているのだろうけど、議員さんは書名が打ち出されていないのだからばれることはないと思っていたのかも。勿論、知っていた奴はいるわけだが。 
せいぜい釈明や言い訳をすればいいと思う。でも、どうしてもっと巧い言い訳、面白い言い訳をしないのだろうか。また、(知っていたらしい)後藤元秀の言い訳は最悪だね。「官能小説」を買ったということよりも、「別の客」のレシートを出した方が悪い言い訳だということがわからないようだ。「官能小説」を買ったもっともらしい理由をでっち上げることができれば、凄ぇ! と感心されたかもしれないのにね。
今回、県会議員たちの趣味やセンスが一挙に公開されてしまったわけで、これは有権者にとってはそれなりに有益な情報なのではないか。「えらぼーと*2もいいけど、立候補者のiPodの中身を一挙に比較! という企画をやるメディアってないのか。